2024年11月28日
サマリー
◆仕事や日常生活におけるデジタル化が進み、デジタル社会において本人であることを証明するための「デジタルID」の重要性が高まっている。日本のマイナンバーカードはデジタルにおける本人確認手段として、公的個人認証サービスを提供しており、このデジタルIDの一種と分類できる。
◆デジタルIDは国連が掲げるデジタル公共インフラの実現等において重要な役割を果たすとされる。直近ではG7やG20等の国際会議において、異なる国のデジタルIDを互いに連携させる仕組みである「相互運用性」の実装に向けた議論が始まるなど、国際社会でその重要性が認識されている。しかし、各国のデジタルIDの導入状況や手法等は多様であり、さらにデジタルIDウォレットといった新しい技術での実現も検討される等、相互運用性の実現に向けてはまだ不確定な部分が多い。
◆デジタル技術を用いた本人確認は、現在のパスポートや運転免許証等の物理的な本人確認書類と比較すると、その実態が見えづらく、ユーザ自身で把握・管理することが難しい。そのため、適切なセキュリティと管理体制のもと、ユーザ自身が属性情報や保有するクレデンシャル(運転免許証や資格、銀行口座等)を把握でき、どの情報をどこに提供するかを制御できる仕組みが求められる。マイナンバーを利用してデジタルIDを実現していくためには、利用できるクレデンシャルの拡充やスマートフォンアプリ等による利用形態の整備、相互運用性に向けた国際標準への対応等が必要になる。
◆もちろん、デジタルIDの利用ができない/望まない人が不利益を被らないために物理的な本人確認手段を維持するといった配慮も必要だ。他方、デジタルサービスへの需要が高まっている現状から、将来的にデジタルIDの導入および普及が世界的に必須となるのは間違いない。この潮流の中で、自分自身の個人情報の管理が容易であること、セキュリティの面で信頼が持てる仕組みになっていること等を、私たち自身がしっかり監督していくことが求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
消費データブック(2025/12/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年12月02日
-
2025年7-9月期法人企業統計と2次QE予測
AI関連需要の高まりで大幅増益/2次QEでGDPは小幅の下方修正へ
2025年12月01日
-
高市政権における実質賃金上昇の鍵は?
政策・改革の推進で40年度までの実質賃金は年率1.2~1.6%程度に
2025年12月01日
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2025/12/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年12月02日
-
「年収の壁」とされる課税最低限の引上げはどのように行うべきか
基礎控除の引上げよりも、給付付き税額控除が適切な方法
2025年12月02日
-
2025年7-9月期法人企業統計と2次QE予測
AI関連需要の高まりで大幅増益/2次QEでGDPは小幅の下方修正へ
2025年12月01日
-
「2030年に女性役員比率30%」に向けた課題
TOPIX500採用銘柄における現状、変化、業種別の傾向等の分析
2025年12月01日
-
なぜ今、ベトナム市場なのか:外国人投資家が注目する理由
2025年12月01日


