デジタルアイデンティティ・デジタルクレデンシャルをめぐる取組みと実装技術の論点整理(第2部/全3部)

欧州4カ国と日本のデジタルID基盤・ウォレット構築の比較

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2026年06月25日

  • イノベーション企画部 シニアITリサーチャー 大橋 哲行

サマリー

◆本レポートシリーズは、デジタルアイデンティティの導入・実装の判断を支えることを目的に、各国の取組みと実装技術の両面から論点を整理する。第2部では、EU加盟各国(フランス、オランダ、スペイン、エストニア)および日本の取組みを比較する。

◆EUDIウォレットは「EU全体で1つのウォレットを作る」取組みではなく、EUが共通仕様や実施規則を定め、各加盟国が自国の既存基盤を活かして独自に実装する構造である。各国の既存基盤は国民ID制度や物理IDカードを起点とする共通構成を持つが、越境相互運用や利用者起点の情報制御は限定的であり、EUDIウォレットはこれを補完する共通レイヤーとして構想されている。

◆各加盟国のウォレットはPID(本人識別情報)を土台にクレデンシャルを格納・提示する構造である。初期ユースケースと技術方式には一定の関連性が見られ、フランスはデジタル運転免許証とmdoc、オランダは卒業証明とSD-JWT VCの組み合わせが確認できる。日本はmdocを用いたVC提示をいち早く実用化した一方、欧州が政府主導で公的ウォレットを構築しているのに対し民間プラットフォームを活用しており、クレデンシャルの多様性にも差がある。

◆この差は技術水準の優劣ではなく、EUが「越境相互運用インフラ」、日本が「国内デジタル公共インフラ」として発展してきた設計前提の違いに起因する。日本の論点は2つに整理できる。1つは相互運用性であり、国際的な技術標準やエコシステムとの接続を見据えた検討が求められる。もう1つは利用者起点の情報制御であり、VCとして提示できるクレデンシャルの対象拡大が課題となる。いずれも官民連携が鍵となる。

◆各国の取組みを概観するなかで、mdoc、SD-JWT VC、DID/VCといった技術方式の多様性も浮かび上がった。続く第3部では、各方式の要件・仕組み・適用領域を体系的に整理・比較する。

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