2013年01月25日
サマリー
◆2012年3月30日、金融庁はバーゼルⅢを踏まえた自己資本比率に関する告示の改正を公表した。2013年3月31日から適用される。本稿では、改正告示のうち、国際統一基準の連結自己資本比率の、Tier1比率について説明する。
◆Tier1比率は6%以上であることが求められる(2015年3月30日まで経過措置あり)。Tier1比率の分子であるTier1資本は、普通株式等Tier1資本とその他Tier1資本の合計額であり、その他Tier1資本は、その他Tier1資本に係る基礎項目(プラス項目)からその他Tier1資本に係る調整項目(マイナス項目)を控除した額である。
◆基礎項目には、「その他Tier1資本調達手段」に係る株主資本、新株予約権、負債や一定の少数株主持分などが含まれる。「その他Tier1資本調達手段」は、負債より劣後し、償還期限がなく、仮に償還を行う場合でも原則として発行後5年以後にしか行ってはならず(金融庁の確認が必要)、剰余金の配当・利息の支払をコントロールする資本調達手段である。さらに、(負債性資本調達手段の場合)連結普通株式等Tier1比率が一定水準を下回った場合に、元本の削減又は普通株式への転換がなされるという特約が付されていることが必要である。ただし、「その他Tier1資本調達手段」の要件には2022年3月30日まで経過措置が設けられ、2010年9月11日以前に発行された一定の優先出資証券・非累積的永久優先株は、基礎項目に算入できる(算入額は段階的に減少)。
◆調整項目には、自己保有その他Tier1資本調達手段、意図的に(相互に)保有している他の金融機関等の「その他Tier1資本調達手段」や、少数出資金融機関等(銀行の議決権が10%以下)の「その他Tier1資本調達手段」、その他金融機関等(銀行の議決権が10%超)の「その他Tier1資本調達手段」(いわゆるダブルギアリング)などが含まれる。これらは相手方の金融機関が銀行以外(保険会社等)や外国の者である場合を含み、資本調達手段の保有の形態は直接的保有に限らず、投信・ファンド等を通じた間接的保有の場合も含む。調整項目(一部を除く)についても経過措置が設けられ、段階的に算入することができる(2018年3月期に全額算入)。
※2012年4月19日付けレポートの訂正版です。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
バーゼルⅢ告示③ 総自己資本比率(連結) <訂正版>
2013年3月期に8%の水準が求められる
2013年01月25日
-
バーゼルⅢ告示① 普通株式等Tier1比率(連結)<訂正版>
2013年3月期に3.5%、2014年3月期に4%、以後4.5%の水準が求められる
2013年01月25日
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
開示府令の改正案が公表(2026年から一部適用)
有価証券報告書のサステナビリティ情報、人的資本、総会前開示に関する改正案
2025年12月10日
-
日中関係悪化、中国は自国経済・社会の不安定化回避を優先か
2025年12月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

