米雇用環境は改善、但し失業率低下は話半分に
11月の米国雇用統計:非農業雇用者数は12万人増、失業率は8.6%
2011年12月05日
サマリー
◆11月の非農業雇用者数は前月差12.0万人増と市場予想には僅かに届かなかったが、過去2ヶ月分が7.2万人分も上方修正された点を考慮すると、雇用環境は底堅く改善しているといえよう。景気後退懸念を概ね払拭する内容だが、オバマ大統領や金融当局にとってはまだ十分なペースではないかもしれない。注目される民間部門は14.0万人増とコンスタントに増加。政府部門は労働市場の足を引っ張り続けており、民間部門では、建設業が不振だが、小売や専門・企業向けサービスや教育・健康サービス、レジャー・接客業などサービス部門が拡大している。ただ、雇用者数は相対的に低賃金のセクターで増えているために、賃金水準(平均)は伸び悩んでいる。依然として企業側優位の労働市場であり、一部のセクターや職種を除くと、採用に慎重な企業は待遇条件を大幅に引き上げなくても必要な人数を確保できている。◆11月の失業率は8.6%と前月から0.4%ポイントも低下し、2年8ヶ月ぶりの低水準に。4月以降の9.0~9.2%という狭いレンジを大きく突き破った形であり、Fedが11月に公表した2012年の失業率見通しを一年も前倒しで達成したことになる。だが、ポジティブな要素とネガティブな要素がともに失業率低下に作用しているため、失業率の改善を額面通りに受け取ることはできない。前月に引き続き、経済的理由のパートタイム従業員の減少、解雇等の非自発的離職の減少、長期失業者の減少などは雇用環境の改善を示唆するが、一方で、労働市場からの退出が加速した結果、見かけ上、失業率が大幅に下がったともいえよう。過大評価は禁物である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月22日
金融商品の評価
金融商品の価値はどのように算定するのか?
-
2021年01月22日
2020年12月全国消費者物価
コアCPI変化率は約10年ぶりに▲1%台まで下落幅が拡大
-
2021年01月22日
家計の住宅ローンを点検する
近年の動向とコロナショックによる現時点での影響
-
2021年01月21日
2020年12月貿易統計
欧米での経済活動制限による需要減少を受け、輸出は足踏み
-
2021年01月21日
社外取締役に期待される役割の開示~改正会社法施行規則
よく読まれているリサーチレポート
-
2020年12月17日
2021年の日本経済見通し
+2%超の成長を見込むも感染状況次第で上下に大きく振れる可能性
-
2020年12月01日
2020年10月雇用統計
有効求人倍率が1年半ぶりに上昇
-
2020年11月20日
日本経済見通し:2020年11月
経済見通しを改訂/景気回復が続くも、感染爆発懸念は強まる
-
2020年08月14日
来春に改訂されるCGコードの論点
東証再編時における市場選択の観点からも要注目
-
2020年10月15日
緊急事態宣言解除後の地域別観光動向/Go To トラベルキャンペーンのインパクト試算
ローカルツーリズムが回復に寄与するも、依然厳しい状況が続く