日本経済見通し:2024年10月

石破政権の「地方創生2.0」「2020年代に最賃1500円」は実現するか

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2024年10月23日

サマリー

◆都道府県間の経済の地域間格差の是正は長期的に進まず、労働生産性上昇率は大都市部を含めて全国的に低下してきた。地方創生の取り組みが本格的に始まった2010年代後半以降も改善は見られない。大都市部への就業者の偏在も進んだが、日本の労働生産性上昇率への直接的な影響は限定的と試算され、各地域の生産性の動向がマクロの生産性の伸びを決定付けてきた。

◆過去10年の地方創生策がマクロレベルで成果が上がらなかった理由の1つに、KPI(重要業績評価指標)の設定による進捗管理が不十分だったことが挙げられる。まち・ひと・しごと創生では130個を超えるKPIが設定されたが、点検・検証が表面的でPDCAサイクルが回ったとはいい難い。2023年から始まったデジタル田園都市国家構想では国の取り組みが「後方支援型」となり、成果の進捗管理が一段と曖昧になった。石破茂政権の「地方創生2.0」では、幅広い地域をデジタルの実装段階へと早期に移行させるとともに、「伴走型」で国が地方と一体となってPDCAサイクルを確立することが重要だ。

◆石破政権は、最低賃金(以下、最賃)を2020年代に全国加重平均で1,500円に引き上げる方針だが、達成には過去最高を上回る引き上げ率が要求される。最賃の急速な引き上げで企業負担が過重になり、最賃法で保護すべき低賃金労働者の雇用環境が悪化するリスクはとりわけ地方部で大きい。石破首相の重視する地方創生に逆行する恐れもある。「2020年代」という新たな達成時期は経済実態に照らして柔軟に見直すべきだろう。中小企業の生産性向上支援などを加速させるとともに、EBPM(証拠に基づく政策立案)の強化が一層求められる。

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