サマリー
◆2024年10月1日に石破茂新政権が誕生した。岸田文雄政権の経済政策を継承し、デフレ脱却最優先の経済・財政運営を行う方針である。低所得者世帯向けの給付金などを含む経済対策を近く取りまとめる考えだが、経済対策は「規模ありき」ではなく、岸田政権の関連施策の効果や足元の経済状況を十分に踏まえた上で、追加の対策が必要な家計や企業に絞って実施すべきだ。
◆石破首相は企業から労働者への分配面を重視しており、労働分配率の引き上げによる賃上げや、最低賃金(最賃)の引き上げ加速などを行う考えである。だが関連する統計データなどから見ると、労働分配率の引き上げ余地は小さい。最賃1,500円への引き上げを現行の「2030年代半ば」から前倒しして「2020年代」に目指すのはチャレンジングな目標だ。企業負担や低賃金労働者の雇用への影響が懸念される。
◆石破政権が推進する予定の「地方創生2.0」が日本経済の起爆剤となるには、岸田政権下で進められた地方のデジタル基盤整備などの取り組みを継続・加速させるだけでなく、幅広い地域が実装段階(デジタルの活用で経済社会が活性化する段階)へと早期に移行する必要がある。また、過去10年間の地方創生の取り組みを総括して問題の所在を明らかにし、有効な対策を具体的に示せるかも注目される。
◆岸田政権はデフレ脱却を大きく前進させたほか、少子化対策の強化や「三位一体の労働市場改革」の推進、経済安全保障の強化、「資産運用立国実現プラン」の策定などの実績を残した。だが、これらの多くは緒に就いたばかりだ。石破政権では、国内の供給力の強化や労働移動の円滑化、出生率の引き上げ、財政健全化など岸田政権が積み残した重要課題で成果を上げるとともに、デフレ脱却後も見据えた供給面重視の経済・財政運営が期待される。
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