サマリー
◆2024年の春闘賃上げ率は2年連続で前年を大幅に上回り、5%台に乗せそうだ。日本労働組合総連合会(連合)が3月15日に公表した第1回回答集計結果によると、定期昇給込みの賃上げ率は5.28%となり、ベースアップ(ベア)率が大幅に引き上げられた。実質賃金を押し上げ、2023年10-12月期まで3四半期連続で前期比マイナスとなった個人消費の回復を力強く後押しするだろう。
◆日本銀行(日銀)は3月金融政策決定会合において、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みおよびマイナス金利政策の撤廃などを決定した。「異例」の金融緩和策から「普通」の金融緩和策への転換を意味する。金融政策正常化への第一歩であり、日銀が市場の混乱なく踏み出した点は評価される。当社では、2024年10-12月期に短期金利を0.25%に引き上げ、2025年以降は年0.50%pt程度(年2回)のペースで引き上げていくと想定している。日銀のバランスシート縮小など出口戦略を円滑に進めていくことが中長期的な課題だ。
◆今後の労働供給の増加余地は小さく、人口動態を背景とした賃上げの動きは中長期的に継続するだろう。これまでは女性の就業継続の進展などにより、生産年齢人口が減少する中でも就業者数は増加した。だが、いずれは就業者数も減少基調に転じるとみられる。とりわけ中小・零細企業にとっては人手不足が逆風となりやすく、こうした中で労働市場での競争力を高めることは事業継続性に結びつきやすくなる。投資の拡大による商品・サービスの高付加価値化で収益力を高めるとともに、賃上げを含む処遇改善や幅広い就業ニーズに対応した就業環境の整備などにおいて、大胆な取り組みが求められるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
日本経済見通し:2024年1月
能登半島地震の影響/2024~33年度の経済財政・金利・為替見通し
2024年01月23日
同じカテゴリの最新レポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
主要国経済Outlook 2025年6月号(No.463)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年05月26日
-
世界経済は落ち着きを取り戻すのか
2025年05月26日
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日