サマリー
◆2024年1月1日に発生した能登半島地震による経済への影響を暫定的に試算すると、建物や道路などストック面での被害額は石川県で1.1~1.5兆円程度とみられる。フロー面では、石川県のGDPの損失は地震発生から1カ月間で350~450億円程度に上る可能性がある。同県の経済規模(2019年度の実質GDPは4,000億円弱/月)を踏まえると、経済活動に深刻な影響を及ぼしていることが示唆される。ただし日本全体で見ると、経済規模対比で見た損失が小さく、復興需要の発生や他地域への生産代替なども見込まれるため、日本の実質GDP成長率への影響は限定的とみられる。半導体などの工場停止により、サプライチェーンの寸断による供給面からの影響などには注意が必要だ。
◆日本経済中期予測を2年ぶりに改訂した。2024~33年度の実質GDP成長率は年率+1.0%と見込んでいる。予測期間前半は緩和的な財政・金融政策の下、経済活動の正常化や高水準にある家計貯蓄の取り崩し、世界経済の堅調な推移などを背景に、個人消費や輸出、設備投資を中心に増加しよう。後半では、国内の人口減少や世界経済成長率の低下が内外需の重しとなり、GDP成長率は低下するだろう。CPI上昇率は同2.2%と見込んでおり、日銀は2024年度から2027年度にかけて年0.5%ptのペースで利上げを慎重に進めると想定している(2027年度に短期金利を1.75%程度まで引き上げ)。円高ドル安が進行し、2030年代初めに100円/ドル台前半で推移する見込みである。
◆国と地方のプライマリーバランス(PB)は2025年度でGDP比▲3.7%の見込みである。同年度にPBを黒字化させるという政府の財政健全化目標の達成は厳しい。公債等残高については、予測期間中の前半にGDP比で低下するものの、後半には緩やかながら上昇に転じると見込んでいる。予測期間の最終年度である2033年度でGDP比201%と、新型コロナウイルス禍前の2019年度の水準を上回る。金融政策の正常化に歩調を合わせて財政健全化を進める必要性は、予測期間後半にかけて一段と強まるだろう。
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