サマリー
◆安倍総理は消費税増税先送りを表明:2014年11月18日、安倍総理は消費税増税を先送りし、衆院解散・総選挙に踏み切る方針を表明した。当社は、今回の増税先送りの決定や、2014年7-9月期GDP一次速報の発表などを受けて、経済見通しを改訂した(→詳細は、熊谷亮丸他「第183回 日本経済予測」(2014年11月21日)参照)。改訂後の実質GDP予想は2014年度が前年度比▲0.5%(前回:同+0.7%)、2015年度が同+1.8%(同:同+1.5%)である。
◆アベノミクスの光と影:今回のレポートでは、「アベノミクスの光と影」を多面的に検証した。アベノミクスが、わが国のマクロ経済にプラスの影響を及ぼしてきたことは間違いない。しかしながら、当社は、アベノミクスの基本的な方向性は正しいものの、依然として、いくつかの大きな課題が残されていると考える。
◆中長期的課題:財政規律の維持と「第三の矢(成長戦略)」の強化:アベノミクスが抱える中長期的な課題は、①社会保障制度の抜本的な改革などを通じて財政規律を維持すること、②農業、医療・介護、労働といった分野における、いわゆる「岩盤規制」を緩和することなどを通じて、「第三の矢(成長戦略)」を強化すること、という2点である。なお、当社は、わが国で賃金が低迷してきたのは「分配政策」ではなく、「第三の矢(成長戦略)」が不十分であったことに主たる原因があると考えている。
◆短期的課題:低所得者向け給付金や「地方創生」などへの取り組みがカギ:アベノミクスには光と影がある。現時点で、アベノミクスは、輸出企業を中心とする製造業、大企業、大都市の富裕層などに大きなメリットを与えているが、内需型の非製造業、中小企業、地方の低所得層などへの恩恵は小さい。以上の現状認識から、当社は、短期的な課題として、低所得者向け給付金の積み増しや、「地方創生」への取り組みを加速することなどを通じて、中小企業や地方の低所得層などに一定の配慮を示すことが必要だと考えている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
主要国経済Outlook 2025年7月号(No.464)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年06月25日
-
立ち止まる金融政策、ただし一服ムードはない
2025年06月25日
-
日本経済見通し:2025年6月
トランプ関税による足元の影響は?/参院選の争点である家計支援策
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日