サマリー
◆2026年4月に米Anthropicが発表した生成AIモデル「Claude Mythos Preview」は、サイバー領域において高い能力を持つとされ、現在は一部の機関や企業に限定して提供されている。こうした限定提供の判断は、既存の制度や対応能力ではAIの社会的影響を十分に制御しきれない段階に近づいていることを示す先行事例といえる。
◆こうした動きは、AIモデルの提供形態が、従来のように広く一般に提供されるAIと、利用主体や用途が制約されるAIの二層に分化していく可能性を示している。AIモデルの開発企業にとっては、高リスク領域における合理的なリスク管理手段となる一方で、利用者側にとっては、AIモデルへのアクセス権の有無に応じて、対応能力や競争力の格差が生じる可能性がある。
◆もっとも、このような提供形態が今後も維持されるとは限らない。今後の展開は、「フロンティアモデルと同水準のAIモデルの普及時期」と「アクセス統治の強度」といった二つの軸に左右されると考えられる。これらの軸に基づくと、AIモデルの提供構造は、①管理型AIの拡大(統治が有効に機能するケース)、②管理主体の分散(不安定な二層構造が生じるケース)、③統治の形骸化(事実上の一般化が進むケース)といった三つのシナリオに整理される。
◆現在は、上記のシナリオ①(管理型AIの拡大)に相当する状況にあるが、同水準のAIモデルの普及やアクセス統治の変化により、他のシナリオへ移行する可能性がある。とりわけシナリオ③(統治の形骸化)に進んだ場合、悪用リスクへの対策を講じる時間的猶予がなくなる。このため、企業には、被害発生を前提とした迅速な対応体制の整備、政府にはAIモデルへのアクセス確保に向けた外交的対応やソブリンAIの検討が求められる。
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