サマリー
◆本レポートは、島本高志・新田尭之「大和物価センチメント指数開発の試み」(大和総研レポート,2024年12月26日)(※1)で開発した「大和物価センチメント指数」(以下「大和PSI」)について、その詳しい性質を分析した(※2)。
◆第一に、大和PSIは、上昇局面の変動要因(外生的要因:原材料・為替等、内生的要因:人件費等)を特定可能である。また、先行性について分析したところ、外生的要因が主導する場合、大和PSIはコアCPI(除く生鮮食品)に対し約3カ月先行する一方、内生的要因が主導する場合は先行性を持たないか、約1カ月遅行する可能性が示唆された。
◆第二に、大和PSIはCPIとの相関や予測用データとしても、既存の有力先行指標である企業物価指数より良好な結果を示した。また、その他の物価指標である、日銀短観の販売価格判断DIや、家計最終支出デフレータ、CPI刈込平均値とも密接な関係を持つ。
◆結論として、大和PSIは上昇局面における変動要因の特定や、外生的なインフレ圧力の早期把握などに有用である。各種データと補完的に活用することで、物価動向分析の精度向上に貢献し得るだろう。
(※2)本レポートの作成に当たっては、研究前の段階で肥後雅博教授(東京大学)から有益な助言やコメントを頂戴した。ここに記して感謝申し上げる。また、研究中は当社デジタルソリューション研究開発部の栗山太吾氏より、有益な助言やコメントを頂戴した。本レポートに残された誤り等は、全て筆者個人の責任である。なお、本レポート内の所見は全て著者の個人的見解であり、当社の物価見通しを示すものではない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
大和物価センチメント指数開発の試み
CPIとの間に高い相関および先行性を有する指数の開発に成功
2024年12月26日
-
国際学会から見る次世代AIの現在と未来
Andrew Ng教授の描く近未来図と、AAAI-25から知る最新技術動向
2025年04月11日
-
金融経済分析を変える自然言語処理の力② 大規模言語モデルの登場と今後の展望
高い精度や幅広い応用性に魅力も全ての従来手法は代替されないか
2024年11月01日
-
金融経済分析を変える自然言語処理の力① 従来のテキスト分析が与えたインパクト
定性的なテキストを定量的に測る能力などに従来から大きな魅力
2024年09月19日
同じカテゴリの最新レポート
-
DeepSeekショックから半年、米国優位は続くか
オープン型AIモデルがもたらした変化
2025年06月24日
-
中東情勢緊迫化で高まる原油高騰リスク
原油価格150ドル/bblで25年度の実質GDP成長率は0.5%pt下振れ
2025年06月23日
-
2025年5月全国消費者物価
米価格の上昇が他の食料品や外食など関連品目の価格にも波及
2025年06月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日