2024年12月26日
サマリー
◆本研究では、消費者物価指数(前年同月比、以下CPI)に対して先行性を有する「大和物価センチメント指数」の開発を試みた(※1)。具体的には、内閣府「景気ウォッチャー調査」における「景気判断理由集」の各テキストを「物価上昇」、「物価下落」など4種類に分類した結果を基に指数を構築した。
◆各テキストをより高い精度で分類するために、本研究では生成AIの一種である大規模言語モデル(Large Language Model,以下LLM)を活用した。ここでは、LLMへの命令であるプロンプトの最適化を通じて、高い精度でのテキスト分類に成功した。さらに、指数の算出式を工夫して、CPIとより高い相関を得ようと試みた。
◆2001年から約24年分の月次データで、大和物価センチメント指数とCPIとの相関係数を確認した結果、消費税調整済のコアCPI(除く生鮮食品)との間で最大0.888(2カ月先行)、同コアコアCPIとの間で最大0.817(5カ月先行)、という先行研究を上回る高い相関が確認された。さらに、指数の振れを抑えるために後方3カ月移動平均を施したところ、先行性はやや薄れたものの、同コアCPIとの間の相関係数は最大で0.903(1カ月先行)までに達した。
◆各種データとの補完的な活用にはきわめて有用である一方、注意点としては、元データが本来は景気に関する調査によるものであることが挙げられる。そのため、先行研究と同様に、定期的な価格改定など景気と無関係な価格動向に弱い可能性は、依然として残る。
◆次回以降の分析では、LLMが物価の上昇や下落を判断する際に用いた単語や、判断の根拠となったテキスト本文を解析することで、物価変動に影響を与えた特徴語を抽出することなどを検討している。
(※1)本研究においては、当社データドリブンサイエンス部の栗山太吾・寺坂壮一郎・參木裕之の各氏から、有益な助言やコメントを頂戴した。なお、本研究内の所見は全て著者らの個人的見解であり、当社の物価見通しを示すものではない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
金融経済分析を変える自然言語処理の力① 従来のテキスト分析が与えたインパクト
定性的なテキストを定量的に測る能力などに従来から大きな魅力
2024年09月19日
-
金融経済分析を変える自然言語処理の力② 大規模言語モデルの登場と今後の展望
高い精度や幅広い応用性に魅力も全ての従来手法は代替されないか
2024年11月01日
-
ナウキャスティングモデルによる実質GDPの早期把握
『大和総研調査季報』2022年秋季号(Vol.48)掲載
2022年10月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
一時152円台に突入したドル円レート、日本経済への影響と円高の背景
10円の円高ドル安でGDPは▲0.16%も多くの企業・家計にはプラス
2026年09月09日
-
2026年9月日銀短観予想
AI・半導体需要で製造業は改善、非製造業はコスト増で悪化を予想
2026年09月09日
-
鉱工業生産は当面AI・航空・防衛関連需要がけん引
他方で、中東情勢等による下振れリスクに注意
2026年09月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

