サマリー
◆本稿では、日本銀行(日銀)による長期国債の買入れ減額が長期金利を押し上げる度合いを試算した上で、金利上昇によるマクロ経済及び企業・家計への影響を考察する。
◆試算の結果、日銀の国債買入れ減額が長期金利を直接的に押し上げる度合いは小さいとの示唆が得られた。だが国債の需給双方に複数のシナリオを置いて試算したところ、海外保有比率の高まりによるリスクプレミアムの上昇によって、長期金利は2040年で3~7%程度まで高まり得る。このうち7%程度の金利シナリオでは、リスクプレミアムが上昇しない場合と比較して、実質GDPは6.5%程度下押しされる可能性がある。
◆金利上昇で企業部門では経常利益が減少し、製造業よりも非製造業、大企業よりも中小企業で悪影響が大きく表れる。家計部門では純利息収入が増加するが、その恩恵は金融資産を多く保有する高齢層に集中する。日銀が金融政策の正常化を進める中で金利上昇リスクを抑制するためにも、政府は財政健全化を着実に進め、国債供給の増加を抑制することが重要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
将来の金利負担増で政府債務はどうなるか
内閣府中長期試算のベースラインケースでは「財政破たん」の可能性
2018年11月01日
-
第222回日本経済予測
不安定化する外部環境の下で日本経済の成長は続くか①米国景気・円高、②金利上昇リスク、③少子化対策、を検証
2024年08月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
経済指標の要点(8/19~9/12発表統計分)
2025年09月12日
-
2025年9月日銀短観予想
製造業で業況判断DI(最近)は改善も、先行きへの警戒感は強い
2025年09月10日
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日