サマリー
◆歴史的な高インフレに直面する中、関心の集まる賃金の動向について、本稿では、名目賃金と物価の相互作用の強まり度合い、及び実質賃金の増加に向けた課題を検討する。その上で、潜在的に達成可能な名目賃金の上昇率を示す。
◆【名目賃金と物価の相互作用】両者の非線形的な関係を考慮した推計に基づけば、基調的なインフレ率はいずれ2%に達する可能性がある。転職市場の活性化などにより賃金上昇圧力が一段と強まれば、日銀の物価安定目標の達成時期は早まるとみられる。ただし、金融政策の引き締めが遅れた場合、悪影響が一段と大きくなるリスクには留意が必要だ。
◆【実質賃金の増加に向けた課題】実質賃金を要因分解し他国と比較すると、交易条件の伸び悩みが顕著である。国内で生み出された付加価値は増加していたものの、海外に流出する所得の方が増加した結果、経済全体の所得が減少してしまう状況が2020年終盤から2022年中頃まで続いた。輸出企業を中心に企業の価格設定行動が消極的であったことが交易条件の伸び悩みの背景にあるとみられる。
◆【潜在的に達成可能な名目賃金の上昇率】インフレ率が日銀の物価安定目標の2%で定着すると、物価低迷期とは異なり、物価上昇による名目賃金上昇率への影響度は非線形的に高まる。加えて、「交易条件の改善」や「労働生産性の上昇」によって、実質的な側面からも賃金の上昇余地はあるとみている。以上を踏まえると、名目賃金上昇率は潜在的には3%程度まで高まる余地があるだろう。
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