サマリー
銀行不安が表面上小康状態にあり、懸案だった米国の債務上限問題も、毎度ながらのチキンゲームを繰り広げたとはいえ、2024年11月の米大統領選挙後の2025年1月1日まで先送りが決まった。当面の不透明さが払拭されたことから、世界の株式市場はポジティブな反応を見せている。もっとも、これまでの累積的な利上げがタイムラグを伴って実体経済に影響することや信用収縮の拡大の可能性等の理由から、特に米国では、近い将来の景気低迷を予想する向きが多い。見込まれる景気の悪化度合いに濃淡はあるものの、株高と奇妙に同居している状態だ。
新たな不透明要因になっているのが、インフレを巡る各国中央銀行の対応である。先駆けて利上げを停止したオーストラリアやカナダの中銀は、インフレの高止まり懸念や想定以上の景気の力強さを受けて、6月に入って予想外の利上げに踏み切り、市場にインフレ抑制の困難さを印象付けた。一方、FRBは6月の利上げを見送ると同時に、年末までに計50bpの追加利上げを見込むという見通しを示し、その解釈を巡って市場を混乱させた。対照的に、テクニカルリセッションに陥ったユーロ圏では、予想通り政策金利を引き上げたECBのトップが、次回も利上げの可能性が極めて高いと予告する。そして、最も厳しい道程が予想されているのがイングランド銀行である。英国のインフレ率は他よりも高いままで、コアが再加速する等、今後も断続的な利上げを余儀なくされよう。実際、市場では、米国を上回るターミナルレートを織り込んでいる。
このように、各国中銀によって直近の対応にばらつきが見られるが、タカ派のメンバーは“引き締め不足よりは引き締め過ぎる方向に間違うべき”と主張するのに対し、ハト派のメンバーは拙速な結論を戒める。いずれも共通している点はデータ次第という姿勢であるが、一見して誰もが納得するような明解な材料が示されるとは限らない。肝心のデータは、全て同じ方向を向いているわけではなく、スタンスによって重視するポイントが異なれば、その解釈にずれが生じるだろう。メンバーの発言に一喜一憂しながら、結局、中銀の判断は“出たこと勝負”という状況がしばらく続くとみられる。
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