「新しい資本主義」をどう実現するか

日本経済が抱える5つの構造問題への対応が必要

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2021年11月25日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦
  • 経済調査部 エコノミスト 岸川 和馬
  • 和田 恵

サマリー

◆内閣府「国民経済計算」等を基に、日本経済が抱える問題点を資金フロー面から整理すると、①成長の不足(=企業の稼ぐ力が弱い)、②交易条件悪化による海外への所得流出、③社会保険料の増加(→可処分所得の低迷)、④若年層を中心とする将来不安(→消費性向の低迷)、⑤企業部門内での資金の滞留(投資低迷)、の5つを指摘できる。こうした構造問題が複合的に絡み合い、長期停滞を引き起こしていると考えられる。

◆「成長と分配の好循環」を通じて「新しい資本主義」を実現するには、成長力の強化や交易条件の改善に向けた取り組みを加速させる必要がある。働き手の可処分所得を引き上げ、将来不安を払拭するための全世代型社会保障改革は不可欠であり、セーフティネットの再編(マイナンバー・口座情報・所得情報の連携)や子育て支援の強化も重要である。クリーンエネルギー戦略と整合的なマクロ経済の姿や、カーボンニュートラルと両立する経済シナリオを具体的に示すこと、今後の経済成長を左右するグリーン・デジタル分野の中期的な財政フレームワークの策定も望まれる。

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