サマリー
◆新型コロナウイルス感染症の拡大により、日本経済の回復はこのところ個人消費とその他の需要項目との間で二極化が鮮明になっている。感染状況に関するシミュレーションを行うと、東京都の人出が5月並みに減少すれば、4回目の緊急事態宣言は8月22日に予定通り解除される。だが人出が減少しなければ、宣言の1カ月延長を余儀なくされ、新規感染者数は9月初めの2,600人/日程度でようやく頭打ちとなる。
◆足元の経済動向や4回目の宣言発出などを受け、経済見通しを改訂した。4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.3%を見込んでいる。7-9月期の見通しは、8月22日に宣言とまん延防止等重点措置が解除される想定で同+2.3%である。ただし宣言の対象地域が拡大されたり、期限が延長されたりする可能性も小さくない。仮に8月1日に宣言の対象地域が15都道府県に拡大すると、7-9月期の実質GDP成長率は同+1.5%となり、さらに宣言が1カ月延長されれば同▲0.4%に低下する。
◆2021年度の最低賃金は全国加重平均で+3.1%と、2019年度並みに引き上げられる。政府には、最低賃金が引き上げられる10月までにワクチン接種を安定軌道に乗せ、経済の正常化を積極的に進めることが求められる。労働分配率の低下は最低賃金引き上げの根拠とされることが多いが、国民経済計算ベースの労働分配率は実は低下していない。業種別に見ると、宿泊・飲食サービスなどの労働分配率は感染拡大後に大幅に上昇した。経済活動が正常化するまでは、マクロだけでなくセミマクロの観点から今後の最低賃金引き上げの影響を分析し、支援策を適宜講じる重要性がとりわけ大きい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
-
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
-
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日