サマリー
◆新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、政府は2021年5月11日までとしてきた4都府県に対する緊急事態宣言を5月末まで延長するとともに、愛知、福岡の両県に対しても宣言を発出する。6都府県への宣言による実質GDPへの影響は、延長後の要請内容で1カ月あたり▲0.8兆円程度とみられる。4-6月期の実質GDPは1-3月期からV字回復するどころか、前期比年率▲0.8%と2四半期連続のマイナス成長が見込まれる。
◆当面の課題は5月末で宣言を解除できるかどうかだ。人出とワクチン接種ペースを想定した上で、東京都の新規感染者数を将来推計すると、5月末に宣言を解除すれば6月中旬に感染が再拡大し、7月初めに1日あたり1,000人を超える。宣言を6月末まで延長すると感染再拡大を防ぐことができそうだが、新規感染者数は高止まりするため、人出を大幅に抑えるための追加的な対策が求められる。
◆諸外国に大きく遅れているワクチンの接種ペースを加速させるとともに、医療提供体制の再構築や、水際対策の徹底が必要である。4回目の宣言発出を着実に回避し、国民が安心して東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を迎えるためにも、政府は従来の延長線上にないスピードと発想でコロナ対策に取り組むべきだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2021年2月
ワクチン普及・変異株による感染拡大と経済への影響を検証
2021年02月19日
-
日本経済見通し:2021年3月
宣言解除後の経済見通し/今後見込まれる追加経済対策の在り方
2021年03月23日
-
日本経済見通し:2021年4月
変異株による三度目の緊急事態宣言で景気の下振れリスクが高まる
2021年04月20日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日