日本経済見通し:2021年3月

宣言解除後の経済見通し/今後見込まれる追加経済対策の在り方

RSS

2021年03月23日

サマリー

◆人出の動きを見ると、今回の緊急事態宣言は感染拡大防止に一定の効果をもたらしたとみられる。実質GDPへの影響は▲2.2兆円程度と、2020年4~5月に発出された前回宣言時の▲3.8兆円程度を大きく下回ったと試算される。2021年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率▲5.1%の見通しであり、前回宣言時に激減した輸出が今回は景気を下支えしよう。4-6月期の実質GDP成長率は経済活動の再開や外部環境の改善もあって同+4.8%を見込む。

◆政府は宣言解除後に新型コロナウイルス感染症の再拡大を防ぐための「総合的な対策」を推進しているが、足元では新規感染者数が下げ止まり、あるいは増加傾向が見られる地域が広がっている。仮に宣言解除後に人出が急回復し、感染力の高い変異株が4月末にかけて流行すれば、2021年度中に3回の感染爆発を引き起こす可能性がある。さらに、ワクチンの接種ペースが遅れる場合、2021年度の実質GDP成長率見通しはメインシナリオの前年比+3.7%から同▲0.7%に悪化する。

◆2021年度に入ると第1次補正予算に関する議論が始まるだろう。財政支出の規模を検討する上で参考にされることが少なくないGDPギャップは2021年1-3月期で約▲28兆円の見込みである。需要不足の主因は個人消費の低迷だが、家計貯蓄は急速に積み上がっており大規模な給付を行う状況にはない。製造業など多くの業種では経済活動が正常化した一方、観光・飲食・娯楽業は苦境に立たされており、こうした状況を勘案して経済支援を重点化すべきである。他方、日本のワクチン接種は諸外国に比べて開始時期だけでなく接種ペースも遅い。財政面から接種ペースの加速を一段と後押しすることも考えられる。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。