サマリー
◆2020年4月の貿易統計によると、輸出金額は前年比▲21.9%と大幅に減少し、ほぼコンセンサス(同▲22.2%)通りの着地となった。欧米を中心とした各国のロックダウン措置等による経済活動の停滞が輸出を直撃した。
◆輸出数量(大和総研による季節調整値)は前月比▲14.9%と2ヶ月連続で減少した。地域別に見ると、米国向け(同▲28.3%)、EU向け(同▲22.4%)、アジア向け(同▲4.5%)といずれも減少した。とりわけ米国、EU向けは壊滅的な数値となった。アジア向けは半導体等電子部品や同製造装置などが増加したことで、欧米と比べて減少幅が限定的なものとなった。
◆4月の輸入数量(大和総研による季節調整値)は前月比+7.8%と2ヶ月連続で増加した。品目別に見ると、中国などアジアからの織物用糸・繊維製品や通信機類などが全体を押し上げた。織物用糸・繊維製品はマスクやその原材料を含んでいる。通信機に関しては、テレワークの拡大等によって需要が急増したことが押し上げたとみられる。
◆先行きの輸出数量は、4月を底に緩やかに増加するとみている。とはいえ、新型コロナウイルスの影響が表れる前の水準まで回復するには相当の時間を要するだろう。世界より一足先に感染収束に成功した中国向けの輸出が全体を下支えするものの、欧米でのロックダウン措置等の解除の動きはあくまでも段階的なものであり、正常化には程遠い状態である。回復も非常に緩やかなものにとどまるだろう。また、早期に経済活動を再開したばかりに、再び新型コロナウイルスの感染が拡大することになれば、ロックダウンの再実施等も予想され、減少基調が継続するリスクも十分にある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2020年3月鉱工業生産
自動車工業を中心に大幅減産も底はまだ先
2020年04月30日
-
2020年3月貿易統計
新型コロナウイルスの影響で輸出は大幅減
2020年04月20日
-
日本経済見通し:2020年4月
「ウィズ・コロナ時代」の産業インプリケーション
2020年04月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年11月雇用統計
失業者数が減少し、雇用環境の改善が進む
2025年12月26日
-
2025年11月鉱工業生産
自動車の減産などが押し下げ要因/当面の間は軟調な推移を見込む
2025年12月26日
-
トランプ関税の影響緩和に作用した企業対応
自動車は関税負担吸収で他企業への波及回避/機械は価格転嫁
2025年12月19日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

