サマリー
◆グローバル金融市場は、3月下旬を底として一旦小康状態を取り戻した。最大の背景はFRBのなりふり構わぬ緊急対策による信用不安の緩和である。しかし対応の遅れが目立つ欧州の信用不安は未だ燻る。また、救済の対象に入らない低格付け企業や新興国の流動性懸念は残されたままだ。そして低格付け社債・国債の利回り上昇の再発リスクの多寡は、結局のところコロナ禍が実体経済に与える打撃の深さと長さに依存する。
◆実体経済に目を向けると、中国経済の局所的回復や、欧米におけるロックダウン措置の部分的な解除期待が浮上していることは確かに朗報だ。しかし中国の回復は未だ需要を伴っておらず、回復継続に向けた前途の困難さを予感させる。また、米国で既に発生している大量の失業が需要回復ペースを緩慢なものにとどめる可能性も高い。より本質的には、ロックダウン措置解除後に感染が再拡大するリスクや、南半球に広がったコロナ禍が感染拡大の第二波・第三波を発生させるリスクも色濃く残る。当面は、社会隔離による経済的打撃を伴う「ウィズ・コロナ時代」と向き合う覚悟が必要となろう。
◆日本経済に目を向けても、旅客輸送、宿泊、百貨店、外食、娯楽などの特定産業を中心として、社会隔離措置の打撃が顕在化している。他方、スーパーやEコマース、医薬品、通信サービス、ソフトウェア、電子機器の分野で代替需要と特需が発生していることも見逃されるべきではない。経済全体への打撃が続く中で、産業別にパフォーマンス格差が発生することも「ウィズ・コロナ時代」の特徴として指摘されよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2020年3月
コロナショックの主戦場は「需要崩壊」と「信用収縮」へ
2020年03月18日
-
日本経済見通し:2020年2月
新型コロナ問題の本質 / 業績悪化懸念下でも株高現象の正体
2020年02月21日
-
2020年 世界経済のリスク分析
「適温経済」シナリオに潜む落とし穴を検証
2020年01月24日
-
日本経済見通し:2020年1月
Ⅰ.2020年の世界経済、「適温経済」への期待に潜むリスク Ⅱ.企業活動に見る消費税増税の影響
2020年01月22日
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日