サマリー
◆新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の世界的な感染拡大により、賃金や雇用の大幅な調整に踏み切る企業が全国的に増加するとみられる。この点、日本の労働分配率は新型コロナ発生前から高水準にあり、人件費の調整圧力はすでに強まっていた。背景には、2010年代半ば以降に実施された春闘での賃上げや働き方改革、最低賃金の積極的な引き上げなどが挙げられる。正規雇用者の所定内給与や非正規雇用者の時給の調整余地は短期的には大きくないため、今後、多くの企業は主に雇用調整によって人件費を削減するとみられる。
◆労働分配率が横ばいで緊急経済対策の効果を考慮しない場合、日米欧での感染拡大が6月に収束するケースでは、2020年の雇用者数は前年から約99万人減少し、失業率は3.8%程度に上昇すると試算される。感染拡大が年末まで続くケースでは、雇用者数の減少規模は301万人程度、失業率は6.7%程度に達する可能性がある。
◆企業の資金繰りや雇用の維持を支援することは、国民生活の安定に資するだけでなく、感染が収束した後に景気が速やかに回復する上でも重要である。足元の急速な景気悪化の影響が長引かないようにするためにも、既に打ち出された各種施策が実効的に機能し、制度の拡充や追加の対策が必要に応じて柔軟に実施される必要がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
緊急事態宣言・緊急経済対策後の日本経済見通し
2020年の実質GDP成長率は短期収束でも▲4.5%の見込み
2020年04月08日
-
米国経済見通し ロックダウン緩和の期待と現実
2020年の実質GDP成長率は前年比▲3.5%を予想
2020年04月21日
-
欧州経済見通し 「正常化」へ最初の一歩
ロックダウンの解除は長期戦
2020年04月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年8月貿易統計
トランプ関税や半導体需要減の影響継続で輸出金額は4カ月連続減少
2025年09月17日
-
トランプ関税でインバウンドに黄色信号
中国人旅行客の伸びしろは大きいものの、他国の状況は厳しい
2025年09月16日
-
経済指標の要点(8/19~9/12発表統計分)
2025年09月12日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日