サマリー
◆日本の最低賃金は国際的に見て低いといわれる。だが、各国の経済構造や就業形態等の違いの影響を受けにくい1人当たり家計消費額対比で見ると、日本はOECD加盟国の平均値並みであり、米国やカナダよりも高い。また、同じ指標を用いて都道府県別に比較すると、概ね同水準にある。最低賃金額の高い(低い)地域で働けば生活費も高く(低く)なるため、最低賃金額の地域差は人口移動を促す要因には必ずしもならない。
◆最低賃金引き上げは消費活性化やデフレ脱却、企業の生産性向上に資すると期待されている半面、雇用の減少や設備投資の抑制などにつながる恐れがある。先行研究を見ると、最低賃金の引き上げは雇用に負の影響を与えるとする分析が多く、生産性への影響は不明確である。日本に関する先行研究は限られているが、同様の見解が示されることが多い。
◆最低賃金は一般労働者やパートタイム労働者の賃金上昇率を上回るペースで引き上げられてきた。それでも悪影響が見られなかったのは、好調な経済環境や、幅広い産業で人手不足感が強まったというマクロ要因が大きかったためと考えられる。だが、こうした状況は変わりつつあり、多くの産業でパートタイム労働者への需要減少が見られる。最低賃金は社会の支え手の拡大・強化や格差是正を図る観点から今後も引き上げていく必要があるものの、経済実態に即した緩やかなペースでの賃上げが求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日