サマリー
欧米の金融政策の転換と関連して指摘されることの多いリスクに、ドル金利の上昇などに伴う新興国からの資本流出がある。当然、それが顕在化する際のマグニチュードは、どの程度の資本が前もって新興国に流入していたかに依存する。世界経済が安泰で、しかもそれが先進国の低インフレと併存する中では、リスク許容度、金利差(新興国-先進国)の双方から新興国への資本流入が促される。現在進行中のこうした局面が長期化すれば、外部環境が変調を来した際に起こり得る反動の潜在的な規模が増幅する。もっとも、もう一つのリスクにも目配りが必要であろう。それは資本流入が新興国の景気を刺激し、インフレ率を抑制しながら、新興国の金融緩和を促すことで引き起こされる、世界経済の好循環そのものがもたらすリスクである。ここに通貨上昇の抑制を目的とした為替介入が加わると、過度の資産価格の上昇を伴う新興国バブル発生の蓋然性が高まる。差し迫ったリスクではなかろうが、世界経済の好循環の終わり方の一つとして、新興国バブルの生成と破裂は有力な候補と捉える必要があるように思える。
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