サマリー
◆4-6月期のユーロ圏経済は消費、投資、輸出がそろって拡大し、前期比+0.6%、前年比+2.3%成長となった。雇用者所得の増加を追い風に個人消費が強い。4-6月期の就業者数は前年比+1.6%と9年ぶりの高い伸びとなり、賃金上昇率も同+2.2%に加速した。ユーロ高による輸出抑制効果が今後予想されるものの、消費者と企業の景況感は高水準を維持しており、内需主導の景気拡大が継続すると見込まれる。ユーロ圏の成長率は2017年+2.2%、2018年は+1.8%と予想する。なお、デフレ懸念がなくなったことを受けて、ECB(欧州中央銀行)が「非伝統的な」緩和政策をどう修正するかが注目されているが、10月26日のECB理事会後に2018年1月以降の資産買取額の縮小計画が公表される見通しとなった。ECBは資産買取額を段階的に減額し、その影響を精査する時間を設ける可能性が高い。マイナス金利の修正はその後になると見込まれる。
◆4-6月期の英国経済は前期比+0.3%、前年比+1.7%と低成長だった。特に個人消費が前期比+0.1%と減速したことが目を引く。失業率は1975年以来の水準に低下しているが、4月の自動車税増税に伴う新車販売の落ち込みに加え、Brexitを巡る先行き不透明感が影を落としたとみられる。消費者信頼感はじわじわ悪化し、中でも景気見通しの悪化が顕著である。英国の成長率は2017年+1.5%、2018年+1.3%と減速を見込む。ところで、BOE(英中銀)は9月の金融政策理事会で、英国の余剰生産能力の解消は想定していたよりもやや速いペースで進んでいるとし、向こう数カ月以内の利上げが適切と考えていることを示した。確かに8月の消費者物価上昇率は前年比+2.9%に再加速し、BOEのインフレ・ターゲットの上限である同+3.0%を遠からず超過すると見込まれる。とはいえ、賃金上昇率が明確に加速し、また景気見通しが好転しなければ、利上げに踏み切るのは難しいと予想される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2024年12月消費統計
耐久財は強いが非耐久財が弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年02月07日
-
インド2025年度予算案:消費回復が民間投資を促す好循環を生むか
企業投資の誘発効果の大きい耐久財セクターへの波及がポイント
2025年02月06日
-
消費データブック(2025/2/4号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年02月04日
-
「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 会社法の改正に関する報告書
従業員等への株式の無償交付、株式対価M&A、実質株主の把握など
2025年02月04日
-
中小企業の更なるM&A促進には環境整備が急務
2025年02月07日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
2025年度税制改正大綱解説
大綱の公表で完結せず、法案の衆議院通過まで議論が続くか
2025年01月06日
-
2025年の中国経済見通し
注目点は①不動産不況の行方、②トランプ2.0 vs 内需拡大
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
岐路に立つ日本の人的資本形成
残業制限、転職市場の活発化、デジタル化が迫る教育・訓練の変革
2025年01月09日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
2025年度税制改正大綱解説
大綱の公表で完結せず、法案の衆議院通過まで議論が続くか
2025年01月06日
2025年の中国経済見通し
注目点は①不動産不況の行方、②トランプ2.0 vs 内需拡大
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
岐路に立つ日本の人的資本形成
残業制限、転職市場の活発化、デジタル化が迫る教育・訓練の変革
2025年01月09日