トランプ時代の世界経済~「根拠なき熱狂」ではないものの・・・~

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2016年11月24日

  • 児玉 卓

サマリー

米国の大統領選挙におけるトランプ氏の勝利は、グローバリゼーションの進展による国内の分断や格差拡大の帰結であると評されることが多い。だが、トランプ時代の米国では格差拡大が一段と進む懸念がある。所得税減税の恩恵をより多く享受するのは富裕層であるし、法人税減税がもたらす企業のキャッシュフローの増分は、株価上昇を通じ、持てるものを更に富ませる効果を持とう。また、中国やメキシコからの輸入品の関税引き上げによって、実質購買力の毀損に悩まされるのは、主に非富裕層である。類似のことはグローバルレベルでも当てはまる。トランプ政権による経済政策は先進国と新興国の成長パフォーマンスを二極化させる可能性が高いのである。既にドル高と表裏の関係にある新興国通貨安は、金融引き締めや緩和見送りなどを通じ、いくつかの新興国の成長見通しに暗雲を投げかけ始めている。無論、現在の米国株高や、それに追随し、またドル高にも触発された日本の株高が「根拠なき熱狂」であるとは思われない。格差拡大と株高は多くの場合親和性が高いからである。問題は、その持続性である。ポピュリスト・トランプ氏が、内外の分断を放置、或いは助長し、さらなる格差を志向するという根本的な矛盾が、いつ、どのように解消されるかを注視していく必要があろう。

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