サマリー
◆2016年11月8日に行われた大統領選挙では、共和党トランプ氏が勝利した。大統領選挙中は、トランプ氏が大統領になることをネガティブにみる向きが多かったが、選挙後はトランプ新大統領に対する期待感の方が勝っているようである。トランプ氏が掲げている政策が景気を押し上げると考えられることに加えて、分割政府が解消したことによって、政策運営が円滑となることが期待されている。
◆トランプ新大統領と議会共和党との間での意見の隔たりは決して小さくないとみられ、公約として掲げられた政策がどの程度実現するかは依然不透明である。政策を実現するためには議会の同意が必要であり、トランプ新大統領が徐々に現実路線に転換していくのがあくまで基本シナリオとなろう。2017年1月20日の新大統領就任までに明らかになる人事に加えて、2017年1月から2月頃にかけて予定される大統領就任演説、一般教書、予算教書の中身を議会がどのように評価するかが当面の注目点となる。
◆米国経済の先行きについては、引き続き個人消費主導の緩やかな景気拡大が続くという見通しに変更はない。トランプ新大統領は様々な政策に関して、早期に立法化を進めるとしているが、大規模な税制変更や財政支出などの政策が予算に盛り込まれるのは、早くても2017年10月から始まる2018年度予算となろう。
◆短期的な影響として考えられるのは、金融市場経由での影響であるが、株価の上昇は個人消費や設備投資にとってプラスの材料となる一方で、ドル高の進行は輸出や設備投資にとって向かい風となる。プラス効果とマイナス効果が相殺されることで、短期的な経済見通しに与える影響はさほど大きくならないと見込む。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日