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来春の消費税増税後の焦点

逆進性の問題にどう対処すべきか

2013年09月20日

経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司

サマリー

◆政府は2014年4月の消費税増税を予定通りに実施する方向で最終調整に入った模様である。安倍首相は10月上旬に増税実施の最終判断を行う見込みであるが、法律通りの増税スケジュールが変更される可能性は低い。社会保障制度の持続性を高め、財政健全化を進めるための消費税増税ではあるが、増税である以上は景気の悪化は避けられない。問題は景気がどの程度悪化するかである。2015年10月の増税前には改めて経済状況の点検が行われるため、今回の一連の増税全体がもたらす経済への影響を整理しておくことは有用である。


◆マクロモデルを用いてシミュレーションすると、3%ptの消費税増税は経済成長率を0.7%pt程度押し下げる。1度に引き上げる税率を小さくした方が経済へ与える悪影響は小さいが、引上げスケジュールを変えるメリットがデメリットよりも十分に大きいとは思えない。政府は今後、財政健全化の目標を達成する道筋を社会保障制度改革の成果と整合的な形で示す必要があり、さらなる消費税増税など追加の国民負担増が避けられないのであれば早期に議論を開始すべきである。


◆消費税は、所得水準に関係なく消費額に対して定率の税負担が課されることから、所得の低い人ほど税の負担率が高くなるという「逆進性」の問題がある。2015年10月の消費税増税時には、逆進性対策として軽減税率の導入が与党内で検討されている。しかし、軽減税率は逆進性をある程度緩和するにとどまり、それを解消できるわけではない。また増税で得られる税収は軽減税率を導入しない場合よりも減少するため、その減収分に見合う分だけ標準税率を引き上げる必要がある。さらに、政治的コストの上昇と消費税の非効率化をもたらすリスクもある。こうしたことに十分注意したうえで、導入の是非を判断すべきである。


◆軽減税率の導入が逆進性対策として不十分である理由は、軽減税率の恩恵が低所得者だけでなく高所得者にも及ぶためである。消費税で対処するのではなく、給付付き税額控除によって調整する方が望ましい。番号制度の導入前である2015年10月の消費増税時までは、次善の策として簡素な給付措置で対応することはやむを得ないが、2016年以降は番号制度の定着を図り、真の低所得者に限定して給付付き税額控除を行うことが望まれる。

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