サマリー
◆2012年10月の企業関連の指標は、足下の減速傾向が継続しているものの、一部で明るい兆しを確認する内容であった。鉱工業生産指数(季節調整値)は、+1.6%と4ヶ月ぶりの上昇となった。加えて、製造工業の実現率は2010年8月以来のプラスとなっており、今回の鉱工業生産は想定外に良い内容であった。輸出金額は前年比▲6.5%と5ヶ月連続のマイナスとなった。米国向け、EU向け、アジア向けの全てが前月から減少しており、輸出全体として弱含むという構造が続いている。機械受注(船舶・電力を除く民需)(季節調整値)は、+2.6%と3ヶ月ぶりに増加したものの、3ヶ月移動平均で見ると、2ヶ月連続の減少となっており、減少傾向が続いている。企業関連の指標の先行きは、米中を中心とする海外経済の回復を待って、年明け以降に徐々に回復に向かうとみている。
◆2012年10月の家計関連の指標は、雇用・所得・消費が引き続き横ばいで推移していることを示す内容であった。完全失業率(季節調整値)は、4.2%となり、前月と同水準であったが、製造業の就業者数が、前月差+31万人と、4ヶ月ぶりの増加に転じた。一方、有効求人倍率は0.80倍となり前月から0.01pt低下し、2ヶ月連続の悪化。実質消費支出は前年比▲0.1%と2ヶ月連続のマイナスとなった。季節調整値は前月比+0.6%と2ヶ月ぶりの増加。エコカー補助金終了の影響により、「自動車購入費」を中心とする「交通・通信」は弱含んでいるが、その他の項目の消費金額は総じて増加している。先行きは、年明け以降、海外の景気回復に伴い輸出が回復し、家計関連の指標は徐々に回復に向かうと見込まれる。
◆今後発表される統計では、12月19日に発表される貿易統計に注目している。これまで輸出は弱含みが続いてきたが、一部の業種では需要回復の兆しが現れている。中国では景気は底を打ったとみられ、日中関係の悪化の影響も緩和され始めていることから、輸出の増加が期待される。10月の鉱工業生産指数と同時に発表された製造工業生産予測調査では、12月に生産は大幅に増加すると見込まれている。11月分の輸出が増加するかどうかは、12月の生産が予測指数通りに増加に転じるかどうかの試金石となるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
経済指標の要点(6/19~7/24 発表統計分)
2012年07月24日
-
経済指標の要点(7/25~8/21 発表統計分)
2012年08月21日
-
経済指標の要点(8/22~9/18 発表統計分)
2012年09月20日
-
経済指標の要点(9/19~10/18 発表統計分)
2012年10月19日
-
経済指標の要点(10/19~11/20 発表統計分)
2012年11月21日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4月貿易統計
輸出金額は7カ月連続の増加も、先行きの不透明感は継続
2025年05月21日
-
経済指標の要点(4/16~5/19発表統計分)
2025年05月19日
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)
民需は増加するも、純輸出の減少などで4四半期ぶりのマイナス成長
2025年05月16日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日