サマリー
◆【概況】輸出は3ヶ月振りのマイナス:2011年10月の貿易統計は、東日本大震災後の大幅な減少から着実に持ち直してきていた輸出が足踏みし、先行き不透明感が高まる内容であった。輸出金額は前年比▲3.7%と3ヶ月振りのマイナスとなり、市場コンセンサスも大きく下回った。海外経済の減速、円高の長期化などによって、輸出回復にブレーキが掛かった格好である。他方、輸入金額は、輸入価格の高止まりや原子力発電所事故・稼働停止問題に伴う代替燃料の需要増加を背景に、前年比+17.9%と22ヶ月連続のプラス。この結果、貿易収支は▲2,738億円と2ヶ月振りの赤字となった。
◆【地域・品目別動向(名目)】電気機器の弱含みが続く:主要品目別の輸出金額では、世界的なIT関連製品の需要鈍化の影響で「電気機器」が前年比▲12.3%と8ヶ月連続のマイナスとなった点が注目される。電気機器については、日本の輸出に先行する韓国と台湾の電子部品の出荷・在庫バランスが弱含み傾向にあることや、中国の電気機械の輸出が鈍化している点にも注意が必要であろう。また、「一般機械」が前年比▲5.7%と2ヶ月連続でマイナスとなった。アジア地域の景気減速の影響が顕在化し始めた可能性がある。
◆【今後の見通し】輸出は短期的に横ばい圏で推移:輸出の先行きは、短期的に横ばい圏での動きとなる公算である。世界景気と為替からみた日本の輸出数量の推計値(当社推計)が低下傾向を続けていることから窺えるように、海外経済の減速が輸出の重石となっているためである。また、欧州の財政危機に伴う金融市場の混乱は実体経済へ波及し始めており、日本の輸出における下振れリスクとして強く意識する必要がある。タイの大洪水に関しては依然として不確実な要素が多いが、日本の輸出に対する影響はさほど深刻なものとはならないと想定する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
-
一億自己啓発社会の死角
データが示す、転職志向・子育て・ジェンダーにおける格差
2025年09月05日
-
2025年7月消費統計
需要側統計は強いが供給側は弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年09月05日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日