サマリー
◆欧州に大きなショックをもたらしたロシアのウクライナ侵攻から約5ヵ月が経過したが、ウクライナ問題に大きな進展は見られない。EUの経済制裁に対して、ロシアは報復措置としてEUへのガス供給を絞りつつある。EUは脱ロシアに向けて冬への備えを急いでいるが、ロシアは、EUの準備が整うまでの時間的余裕を与えないかもしれない。
◆ロシアに対する経済制裁が即効性が乏しいのに対して、ロシアによるガス供給停止は、ロシア依存度が高い国ほど、より早く悪影響をもたらすだろう。欧州経済は、そのようなアンバランスな運命をプーチン大統領に委ねる格好になっている。引き続き、2023年予想を中心に下方修正の動きが見られる。
◆先行きの減速懸念が強まり、インフレ対応と成長維持の両立が困難になっている。いずれも、ウクライナ問題という地政学的要因が強く作用しており、EU域内あるいは国内の政治的混乱を招いて、事態を複雑化させている。人手不足にエネルギー不足、さらには水不足がサプライサイドの問題の解消を難しくすると予想され、スタグフレーションの可能性が高まっている。また、金融市場にとどまらない域内の分断(fragmentation)の顕在化、すなわち再燃する構造問題にも対処する必要に迫られよう。
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