2025年03月12日
サマリー
◆2022年4月に東京証券取引所が市場区分の見直しを実施して以降、上場会社に持続的な企業価値向上の動機付けが促されたことや、投資先企業の経営陣に積極的な提言を行うアクティビストの存在感が高まったこと等で、配当方針等を見直す動きが広がっている。
◆2024年末時点で、TOPIX500企業のうち301社が、有価証券報告書(有報)の「配当政策」に数値目標を掲げている。2022年度と2023年度では数値目標を新たに採用する企業がそれぞれ20社を超え、過去の増加ペースを上回っている。
◆2022年3月時点からの変化の特徴に、①「配当性向」を掲げる企業が最も多いものの、「配当性向のみ」の企業は減り、「配当性向」に「総還元性向」または「株主資本配当率(Dividend on equity ratio:DOE)」を組み合わせる企業が増えていること、②1株あたり年間配当金を前期の水準以上とする「累進配当」を採用する企業が増えていること、が挙げられる。
◆数値目標も上昇している。配当性向では約2割、総還元性向とDOEでは約1割の企業が目標を引き上げた。数値目標の平均値(2023年度)は、配当性向が36.5%、総還元性向が48.2%、DOEが3.3%となっている。
◆2024年度に個別に開示されている配当方針等の変更内容をみると、これらの傾向は続いている。今後は、数値目標の採用や引き上げだけでなく、還元の基準を分かりやすくする変更開示も増えそうだ。例えば、政策保有株式を売却する企業の配当等の方針が「配当性向xx%を目安」だった場合、一過性の利益を含めるのか、それとも除くのか、除く場合は政策保有株式売却で得たキャッシュを何に使うのか等、投資家が注目する材料は多い。投資家とのコミュニケーションの質を高める行動が続くとすれば、各社が配当方針等を分かりやすく見直す傾向も続くだろう。
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