2025年01月14日
サマリー
◆2024年下半期に配当方針等を変更した企業は123社と、同時期としては2009年以降で最も多い。2023年3月に東京証券取引所が上場企業に要請した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」が、資本収益性の向上や持続的な成長のための手段として、多くの上場企業に配当方針等の見直しを促す傾向が続いている。
◆変更の内容では、「累進配当」の導入が目立つ。2024年下半期には33社が累進配当を新たに採用した(追加や変更での採用含む)。社数は2023年上半期の7社、同年下半期の13社、2024年上半期の24社と、徐々に増えている。
◆配当方針等の変更の開示は、株式市場で概ね好感されているものの、増配を伴う開示か否かで株価パフォーマンスは大きく異なる。2022年1月以降の事例を基に、開示から15営業日目の株価を比較すると、増配を伴う場合はTOPIXを約4%アウトパフォームしているのに対し、増配がない場合はTOPIXを約1%アンダーパフォームしている(いずれも中央値)。また、増配の有無での株価パフォーマンスの差は、2024年下半期に加速している。投資家が開示の内容を重視する傾向が高まった。
◆増配のない開示の株価パフォーマンスは総じて厳しいが、これまでの事例をみると、累進配当の導入よりも配当性向や株主資本配当率(DOE)等の比率目標を新たに設ける方が、株価の下支え効果が高い。
◆今後、政策保有株の売却のような一過性の要因で業績変動が大きくなる企業が増えると想定すると、配当方針等では、業績変動の影響が相対的に小さいDOEや累進配当の採用と、業績が上向いた場合の影響が予想しやすい業績連動型の方針(配当性向、総還元性向)とを組み合わせるケースが増えると思われる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
配当方針を変更した企業の特徴と株価
時価総額100億円~1,000億円、PBR=0.9倍未満の企業が多い
2024年07月02日
-
増える配当方針変更と株価パフォーマンス
開示企業の相対株価は概ね上昇
2024年04月23日
-
2024年度の自社株買いが大幅増となった背景と株価への影響
損保の政策保有株式売却が一因。自社株買いが株価の下支え効果も
2024年12月10日
-
TOPIX500企業の6割が株主還元比率を採用
2023年度には24社が新たに「累進配当」を有報に掲げる
2024年07月23日
同じカテゴリの最新レポート
-
「少額投資の在り方に関する勉強会」報告書
東証は上場会社、投資家向けの情報発信などを強化
2025年04月28日
-
IR体制の整備の義務化
パブリック・コメントの開始/7月を目途に実施予定
2025年04月23日
-
個人株主の議決権行使比率は高められるか
「飛び道具」は無いため、株主負担の地道な引き下げが重要
2025年03月26日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日