2024年12月10日
サマリー
◆2024年度の自社株買い実施額は、11月時点で既に直近で最も多かった2022年度(約9兆5,000億円)を上回り、過去最高を更新した。今上半期は、自社株買いの実施企業数、1社あたりの規模が増加した。これに加え、トヨタ自動車が、大手損害保険グループや銀行系株主から、保有政策株式の売却打診を受け、前上半期比で約8,000億円の大幅増となる自社株買いを実施した影響が大きい。
◆また、大手損害保険グループの2024年3月期の有価証券報告書の中で株式保有が確認される409社の内、保有比率が2.5%を超える90社では、今上半期の自社株買いを増やした傾向にあり、株式需給の緩和観測を自社株買いで後退させようとする動きがみてとれる。
◆近年、自社株買いを行った企業は相対的に株価上昇率が高い傾向にあり、今上半期も同様に、全体的に自社株買いの効果が表れている。また、業績(当期純利益)の方向性が同じ企業の間(増益企業群、減益企業群)でも、自社株買いを行った企業の方が株価上昇率は高かった。
◆足元では、銀行や事業会社でも政策保有株式の合理性を見直す動きが進んでいる。株式市場で売り圧力を抑えるため、今後、政策株式として自社株式を保有されている企業を中心に、自社株買いの実施が積極的になると予想される。近年、業績連動型の株主還元方針を採用する企業が増えているが、自社株買いの規模を増やすことで「減配」または「配当予想の下方修正」となる可能性もある。自社株買いを行う際に配当への影響の有無を説明する等して、投資家からの理解を得る工夫に期待したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
上期は低PBR・自社株買い企業の株価が上昇
市場参加者の「期待」に応える企業の「実践」の有無が今後の焦点
2023年10月19日
-
PBR水準別にみた自社株買いと株価の関係
低PBR企業は自社株買いの株価への影響が相対的に大きい傾向
2023年05月22日
-
TOPIX500企業の6割が株主還元比率を採用
2023年度には24社が新たに「累進配当」を有報に掲げる
2024年07月23日
-
縮減が進む政策保有株式とその効果
TOPIX500構成企業の縮減状況、その議決権行使やCFへの影響を分析
2024年02月02日
-
配当方針を変更した企業の特徴と株価
時価総額100億円~1,000億円、PBR=0.9倍未満の企業が多い
2024年07月02日
同じカテゴリの最新レポート
-
意見分かれるグロース市場の上場維持基準見直し案
2025年9月に制度要綱が公表予定
2025年07月28日
-
2025年上半期の配当方針等の変更と株価
減益予想が増えるも、累進配当やDOE採用による増配効果が下支え
2025年07月03日
-
CGコードの見直しで会社の現預金保有に焦点
現預金の必要以上の積み増しについて検証・説明責任の明確化を検討
2025年06月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日