2024年度の自社株買いが大幅増となった背景と株価への影響

損保の政策保有株式売却が一因。自社株買いが株価の下支え効果も

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サマリー

◆2024年度の自社株買い実施額は、11月時点で既に直近で最も多かった2022年度(約9兆5,000億円)を上回り、過去最高を更新した。今上半期は、自社株買いの実施企業数、1社あたりの規模が増加した。これに加え、トヨタ自動車が、大手損害保険グループや銀行系株主から、保有政策株式の売却打診を受け、前上半期比で約8,000億円の大幅増となる自社株買いを実施した影響が大きい。

◆また、大手損害保険グループの2024年3月期の有価証券報告書の中で株式保有が確認される409社の内、保有比率が2.5%を超える90社では、今上半期の自社株買いを増やした傾向にあり、株式需給の緩和観測を自社株買いで後退させようとする動きがみてとれる。

◆近年、自社株買いを行った企業は相対的に株価上昇率が高い傾向にあり、今上半期も同様に、全体的に自社株買いの効果が表れている。また、業績(当期純利益)の方向性が同じ企業の間(増益企業群、減益企業群)でも、自社株買いを行った企業の方が株価上昇率は高かった。

◆足元では、銀行や事業会社でも政策保有株式の合理性を見直す動きが進んでいる。株式市場で売り圧力を抑えるため、今後、政策株式として自社株式を保有されている企業を中心に、自社株買いの実施が積極的になると予想される。近年、業績連動型の株主還元方針を採用する企業が増えているが、自社株買いの規模を増やすことで「減配」または「配当予想の下方修正」となる可能性もある。自社株買いを行う際に配当への影響の有無を説明する等して、投資家からの理解を得る工夫に期待したい。

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