上期は低PBR・自社株買い企業の株価が上昇

市場参加者の「期待」に応える企業の「実践」の有無が今後の焦点

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サマリー

◆2023年度上半期の自社株買い実施企業数と金額は、前年同期をやや下回った。3月末時点で東京証券取引所(東証)のプライムまたスタンダード市場に上場する企業を対象に集計したところ、自社株買いを行った企業数は548社(前年同期比▲11社)、金額は4兆271億円(同▲6,139億円)となった。企業数は高水準が継続するも、5半期連続で増加していた金額は増勢ペースが一旦止まった。

◆一方、株式市場では、自社株買い実施企業は相対的に高く評価されている。当該企業を対象に3月末から9月末までの株価上昇率を計測したところ、自社株買いを行った企業544社の株価上昇率(中央値)は13.3%と、未実施の企業2,612社の7.3%よりも高い。とりわけ、PBRが低い企業の株価パフォーマンスが良好であった。3月末時点のPBRが0.6倍以下で自社株買いを行った企業(132社)の株価上昇率が21.6%だったのに対し、PBRが1.0倍超で自社株買いを行わなかった企業(1,165社)は2.8%に留まっている。

◆3月末に東証が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を発表したことで、自社株買いを「一時的な対応」と市場参加者等にみなされないよう上場企業が慎重になったのとは対照的に、市場参加者は低PBRで自社株買いを行う企業の対応を高く評価したといえる。

◆上半期の自社株買いと株価上昇率の傾向等を見ると、既に「PBR1倍割れ企業に対する変化の期待」が織り込まれていると考えられる。今後は、「上場企業が期待に対してどのように応えるか」といった「実践」や「進捗」へと、市場参加者の関心が移るだろう。過去10年間で見れば、新たに株主還元比率を明示する企業や比率を上方改定する企業が増えてきている。株主還元の強化は株価上昇につながりやすいが、株主還元の原資の持続性、利益成長の確度で企業の評価が分かれていくと予想される。

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