日本版CBDCを先読みするための7つの論点

銀行やキャシュレス決済事業者、金融市場関係者等への影響を探る

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  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • 経済調査部 研究員 中田 理惠

サマリー

◆日本銀行のCBDCの実証実験が予定通りに進展し、新興国でCBDCの正式発行が出始める中、将来的に日本版CBDCが発行されると見込む向きも増えてきた。本稿では、将来的に日本でCBDCが発行された場合、その影響を受けると見込まれる銀行とキャッシュレス決済事業者、金融市場関係者等が押さえておくべき論点を7つ取り上げて考察する。

◆銀行にとってのリスク要因として特に懸念されるのは、個人の銀行預金からCBDCへの資金流出である。金融危機が発生するような場合には、CBDCへの資金流出が加速し、「デジタル取り付け」が発生するおそれがある。また、株式市場では、銀行の収益悪化懸念が高まり、銀行株がネガティブに反応するというケースが考えられる。

◆中央銀行が発行するCBDCは、キャッシュレス決済事業者にとって逆風となる可能性がある。もしCBDCが広く普及し、「現金の代替」として誰もが日常的にCBDCで送金を行うようになれば、ネットワーク効果が強く働いて、個人間送金サービスの分野でCBDCが圧倒的なシェアを占めることも想定される。

◆CBDCは、現行の法定通貨である現金と同じように全国どこでも使えるという「ユニバーサルサービス」として国民に提供されることが求められる。その場合、システム開発・運営会社や決済端末メーカーに「CBDC特需」が発生するかという点も注目される。

◆国際的なCBDCの研究・開発における重要な動きとして、複数の国・地域が協調して、CBDCをクロスボーダー取引に活用するという取り組みが存在する。CBDCを活用したクロスボーダー取引システムが実際に構築されることになれば、企業や家計の国際送金にかかるコスト低減と時間短縮という効果が見込まれる。

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