2022年06月02日
サマリー
◆日本銀行のCBDCの実証実験が予定通りに進展し、新興国でCBDCの正式発行が出始める中、将来的に日本版CBDCが発行されると見込む向きも増えてきた。本稿では、将来的に日本でCBDCが発行された場合、その影響を受けると見込まれる銀行とキャッシュレス決済事業者、金融市場関係者等が押さえておくべき論点を7つ取り上げて考察する。
◆銀行にとってのリスク要因として特に懸念されるのは、個人の銀行預金からCBDCへの資金流出である。金融危機が発生するような場合には、CBDCへの資金流出が加速し、「デジタル取り付け」が発生するおそれがある。また、株式市場では、銀行の収益悪化懸念が高まり、銀行株がネガティブに反応するというケースが考えられる。
◆中央銀行が発行するCBDCは、キャッシュレス決済事業者にとって逆風となる可能性がある。もしCBDCが広く普及し、「現金の代替」として誰もが日常的にCBDCで送金を行うようになれば、ネットワーク効果が強く働いて、個人間送金サービスの分野でCBDCが圧倒的なシェアを占めることも想定される。
◆CBDCは、現行の法定通貨である現金と同じように全国どこでも使えるという「ユニバーサルサービス」として国民に提供されることが求められる。その場合、システム開発・運営会社や決済端末メーカーに「CBDC特需」が発生するかという点も注目される。
◆国際的なCBDCの研究・開発における重要な動きとして、複数の国・地域が協調して、CBDCをクロスボーダー取引に活用するという取り組みが存在する。CBDCを活用したクロスボーダー取引システムが実際に構築されることになれば、企業や家計の国際送金にかかるコスト低減と時間短縮という効果が見込まれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中央銀行デジタル通貨の新展開と日本への示唆
『大和総研調査季報』2022年新春号(Vol.45)掲載
2022年01月13日
-
国際的に見た日本版CBDCの現在位置と今後の展望
先進国の意思決定に見え隠れする中国デジタル人民元の影
2022年06月01日
-
デジタル人民元の狙いと国際金融の未来
『大和総研調査季報』2021年4月春季号(Vol.42)掲載
2021年04月21日
-
デジタル人民元の基本的な特徴と仕組み
導入近づく中国の中央銀行デジタル通貨、二層構造による利点は何か?
2021年02月16日
-
デジタル人民元発行に向けた歩みと最近の動向
パイロットテスト、法改正などCBDCの主導権争いで先頭を走る
2021年02月16日
-
今、なぜ中国のデジタル人民元が重要か
中国の狙いと今後の論点を探る
2021年02月17日
同じカテゴリの最新レポート
-
一括取得型自己株式取得(ASR)入門
ASRに関する基本的な事項をQ&A形式で解説
2026年10月16日
-
QT下で問われる銀行の国債買入れ余力
IRRBB規制上の余地はなお残るが、原資制約を考慮すると上限は143兆円
2026年10月13日
-
金利上昇と「資本コストや株価を意識した経営」
金利上昇による資本コスト上昇は限定的だが引き続き要注視
2026年10月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日

