2021年06月24日
サマリー
◆日本銀行(以下、日銀)は、民間金融機関の気候変動対応投融資をバックファイナンスするグリーンオペの導入を発表した。日本銀行が取り組む初めてのグリーン金融政策である。本稿は、グリーンオペの基礎となる成長基盤強化オペを振り返り、金融機関がこれまでに行ってきた気候変動関連投融資の動向を整理したうえで、グリーンオペの効果に関して2021年3月に導入された貸出促進付利制度と関連づけた試算を行った。
◆いくつかの仮定を置いて試算すると、金融機関の気候変動関連投融資額は、約8,659億円と試算される。これは現状の成長基盤強化オペの残高に比べれば小さく、仮に同額に対して貸出促進付利制度のもと付利が行われることになったとしても、金融機関が得る付利額はごく小規模にとどまると見込まれる。もっとも、成長著しいサステナブルファイナンスの市場に、日銀が間接的に関与するという姿勢を示した意義は大きい。
◆グリーンオペについての骨子は今年7月の金融政策決定会合で公開される予定であるが、今後の注目点として以下の3つが挙げられる。すなわち、①グリーンオペの資金使途がどのような形で指定されるか、またグリーンオペ利用残高が貸出促進付利制度においてどのカテゴリーに相当するか、②企業にとって魅力的な投融資条件となるか、③日銀がさらなるグリーン金融政策の導入に踏み込むか、である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
「○○ボンド」は新たな資金調達手段として根付くか?
企業によるSDGs債・サステナビリティ・リンク・ボンドの活用動向を探る
2021年05月20日
-
日銀の付利制度が高める金融政策の実効性
金融機関の収益を補助し、マイナス金利の深掘りも選択肢に
2021年03月24日
-
貸出支援基金の現状と今後
順調に増加する貸付残高、再延長・拡充はあり得るか
2015年02月20日
-
グリーン金融政策を巡る論点とは
中央銀行は気候変動問題への対応を検討
2021年02月04日
同じカテゴリの最新レポート
-
成長と新陳代謝を促進するグロース市場改革
スタンダード市場への影響も注視
2025年05月12日
-
「少額投資の在り方に関する勉強会」報告書
東証は上場会社、投資家向けの情報発信などを強化
2025年04月28日
-
IR体制の整備の義務化
パブリック・コメントの開始/7月を目途に実施予定
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日