2021年05月20日
サマリー
◆SDGs/ESGの潮流が盛り上がる中、資金調達という観点からは、資金使途を特定するSDGs債や、目標の達成状況によって債券の条件が変動するサステナビリティ・リンク・ボンドといった新しい債券が誕生している。本稿では、特に企業の資金調達に着目してこれら債券の設計や実際の活用動向を分析した。
◆SDGs債は資金使途が限定されており、発行に際して追加的なコストが生じることから、他の資金調達手段に比べてやや制約が大きい。ただ、発行プロセスを通じた自社のサステナビリティ活動の高度化やレピュテーションの向上などを望めるとの意見もあり、単なる資金調達以上の意味合いが期待されている側面もある。
◆企業によるSDGs債の活用動向は発行額のほかに、①資金調達手段としての位置付け、②発行企業の広がり、という2つの側面から捉えられる。SDGs債は社債という調達手段の中では存在感を増しているものの、個々の企業の資金調達から見るとその位置づけは限定的である。また、SDGs債を発行した企業の業種には若干の偏りが見られる一方、発行体のESGスコアは高低さまざまである。
◆サステナビリティ・リンク・ボンドは、資金使途を制約しない一方でサステナビリティについての目標と未達時のペナルティを負うものである。これまでの発行事例を見ると、目標については排出量の削減を掲げる企業が多いなか、それぞれの事業内容に沿った独自の目標を掲げる例もあった。ペナルティについては、金利のステップアップや償還額の増額が主流だが、これらは投資家と発行体のインセンティブが一致しなくなるという問題を孕んでいる。一部ではこれを解消しようとする工夫も見られており、発行事例の蓄積を通してベストプラクティスが追及されるのが望ましい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
企業がSDGsに取り組む意義
将来も社会から必要とされる企業であるために今何をするべきか
2019年08月27日
-
ESG格付はどのように利用されているか
主にインハウスの評価の確認に活用される
2020年04月07日
同じカテゴリの最新レポート
-
成長と新陳代謝を促進するグロース市場改革
スタンダード市場への影響も注視
2025年05月12日
-
「少額投資の在り方に関する勉強会」報告書
東証は上場会社、投資家向けの情報発信などを強化
2025年04月28日
-
IR体制の整備の義務化
パブリック・コメントの開始/7月を目途に実施予定
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日