地域金融機関の自治体向け融資の課題
金利水準の地域性がうかがえるが自治体財政との関連は弱い
2018年07月31日
サマリー
◆地域金融機関の貸出金残高において地方自治体向け融資は一定のウェイトを占めている。とりわけ民間企業向けの貸出需要が少ない地域ほど地域金融機関の経営に与える影響は大きい。一方、自治体の借入利率の水準は一貫して低下傾向を辿っており、2016年度における政令指定都市、特別区を除く市町村の平均借入利率は1.0%を割り込んだ。
◆自治体の借入利率の分布からは民間企業とは異なる特徴が見受けられた。まず、金利水準に都道府県別の特徴、いわゆる地域性があるが、民間企業の借入利率が低いことで知られる愛知県が自治体で見ると平均水準であるなど民間企業とは趣を異にする。また、融資先の財務状況との関連性が低いことも民間とは異なる特徴である。
◆民間企業に比べ、自治体の借入利率は相対交渉、入札など借入先の選定方式、自治体の資金調達方針によって決まる要因が大きいと考えられる。地域金融機関の収益確保の観点からは、行政改革や地方創生にかかる支援など関係強化の上、単なる市場競争に陥らないようにすることがポイントだろう。長期安定的な関係を踏まえた適正な利回り確保の努力が必要だ。
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