2018年02月20日
サマリー
◆内部留保は法令諸規則上定義された言葉ではないが、一般的には企業が稼いだ利益から社外流出分を除いたものを指す。近年、企業業績の改善とともに、企業全体の内部留保も増加傾向にある。内部留保は現預金とは異なるが、企業利益の改善による内部留保の増加は、現預金の増加にも波及し得る。実際に、企業全体の現預金保有も増加傾向だ。
◆企業が現預金を過剰に保有することの問題点は、ROAや資産効率性の低下、また資本コストの上昇を引き起こす可能性があることだ。しかし、資本金10億円以上の企業(金融業、保険業を除く)を見ると、現預金比率の上昇とともに総資産回転率は低下しているが、総資本利益率(ROA)は過去と比較して高水準にある。なお、日本企業のROAが米国や英国の企業に比べて低いのは、現預金保有や資本構成の違いではなく、売上高事業利益率の差に因るところが大きい。
◆利益剰余金の増加による自己資本比率の上昇は、資本コストの上昇要因になっている可能性がある。日経平均採用銘柄(金融などを除く195社)について資本コストを推計したところ、ROAが資本コストを下回る企業が3分の1程度存在した。各企業において資本コストを意識した資本政策が求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
企業は本当にお金を溜め込んでいるのか
おカネはどこから来てどこに行くのか —資金循環統計の読み方— 第6回
2013年11月20日
-
混乱しやすい内部留保に関する議論
2013年10月29日
-
企業の貯蓄と投資を考える~2016年度法人企業統計より~
2017年09月13日
-
内部留保は何に使われているのか
M&Aなど海外向け投資が大幅増
2015年12月17日
-
収益機会を求め増加する日本企業の対外M&A
金融緩和も対外M&A増加の一因、FRBの出口戦略に注意
2017年12月12日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年上半期の配当方針等の変更と株価
減益予想が増えるも、累進配当やDOE採用による増配効果が下支え
2025年07月03日
-
CGコードの見直しで会社の現預金保有に焦点
現預金の必要以上の積み増しについて検証・説明責任の明確化を検討
2025年06月24日
-
グロース市場改革を企業はどう捉えているか
投資家ニーズを汲み上げ、株価を意識的にデザインする必要性
2025年06月13日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日