2013年01月29日
サマリー
◆2012年9月末の国際与信残高は25兆4,780億ドルと、前期(2012年6月末)に比べ+3,453億ドル(前期比+1.4%)となった。2012年9月のECBによる無制限の国債買取策等で金融市場に一定の安心感が広がったことが大きな要因と思われる。
◆与信側(銀行側)からみると、米国の銀行(前期差+1,501億ドル、前期比+4.8%)、邦銀(同+964億ドル、同+3.4%)は前期に比べ、与信残高を増加させている。欧州の銀行(同+379億ドル)も与信残高を増加させているものの、前期と比べ+0.2%とわずかな増加にとどまった。
◆与信残高に占める欧州の銀行の割合は低下傾向にあり、それを米銀と邦銀が補う形が続いている。
◆与信受入側では、新興国向け(前期差+1,317億ドル、前期比+2.8%)、欧州先進国向け(同+1,151億ドル、同+1.1%)、その他先進国向け(同+468億ドル、同+0.6%)で増加した。GIIPS向けは2四半期連続の減少、アジア向けは2四半期ぶりの増加となった。
◆先行き、国際与信は緩やかに増加すると思われる。ECBの無制限の国債買取策等によって、金融市場は引き続き安定しており、さらに米国や中国の景気に改善の兆しがみられるためだ。最大のリスクは、欧州の財政健全化の進捗が停滞し、金融市場が再び不安定化することである。欧州は財政健全化を進めつつ、景気の底割れを回避することが重要である。このことが国際与信の安定的な回復につながる必要条件となる。
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