2024年09月02日
サマリー
◆民間機関が認証するボランタリークレジットの発行量は拡大してきたが、2022年以降は若干減少傾向にある。背景には、品質面や利用方法への批判が強まり、グリーンウォッシュ(見せかけの環境対応)懸念の高まり等から利用者が購入を控える中、発行が見送られていることなどがある。
◆そのような中、ボランタリークレジット市場でグローバル基準の設定を目指す国際イニシアチブであるICVCMが質の高いカーボンクレジットの要件を示した「コアカーボン原則(CCPs)」を2023年に公表し、まずは一部の方法論に基づくクレジットにCCPラベルを使用できるようになった。信頼性が向上し、購入者が品質面で判断しやすくなることが期待される。
◆また、ボランタリークレジット市場への参加を推進する国際イニシアチブであるVCMIが利用のガイドライン「クレームコード」を2023年に示し、企業等は信頼性の高いカーボンクレジットの自発的な利用について主張できるようになった。CCPsに沿った高品質なクレジットの利用が求められるなどハードルは高いが、利用面での信頼性向上につながる可能性がある。
◆今後の注目点として、供給面では大気中の温室効果ガス(GHG)の除去が期待できる炭素吸収・除去系クレジットの創出拡大の取組み、需要面では利用に関する情報開示の強化、を挙げる。一連の取組みを通じて信頼性や透明性が一層向上すれば、ボランタリークレジット市場の拡大につながるものと考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
政府が推進するグリーントランスフォーメーション(GX)実現への道筋と課題
2024年から本格稼働する「成長志向型カーボンプライシング構想」
2024年02月07日
-
東証カーボン・クレジット市場の動向と今後の市場活性化に向けた課題
市場活性化の鍵を握るボランタリー・クレジットの活用
2024年05月09日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
同じカテゴリの最新レポート
-
東証が求めるIR体制の整備に必要な視点
財務情報とサステナビリティ情報を統合的に伝える体制の整備を
2025年04月28日
-
サステナビリティ課題への関心の低下で懸念されるシステムレベルリスク
サステナビリティ課題と金融、経済の相互関係
2025年04月21日
-
削減貢献量は低炭素ソリューションの優位性を訴求するための有用な指標となるか
注目されるWBCSDのガイダンスを踏まえて
2025年04月17日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日