2017年01月25日
サマリー
◆ソーシャル・インパクト・ボンド事業において、公費も含めて多種多様な資金の流入が期待されている。本稿では、そのような資金のうち「休眠預金」及び「寄附金」について、金額規模及びSIB事業への資金流入可能性等を分析し、民間投資が進むための課題について検討する。
◆休眠預金は、預金者による払戻し対応後の残高金額で、2010~13年度平均で約644億円と推計されるが、2019年の助成・貸付開始時には1,000億円超に増加している可能性もある。寄附金は、2015年度の民間公益事業費は、5.3兆円であった。資産規模では、寄附金が休眠預金よりも圧倒的に多い。
◆寄附金は全ての分野の社会的事業が助成対象となるが、休眠預金の場合には主に3つの分野に活用が限定されている。寄附金と休眠預金の活用先を考慮すると、事業分野によってSIB事業の資金供給に差が生じる恐れがあることが明らかになった。社会的事業に対する休眠預金と寄附金の資金供給量におけるバランス、社会的事業の分野別の資金供給のバランス、にも配慮する必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
地方創生に資するヘルスケア産業の創出は実現するか?
~経済産業省の2012~15年度ヘルスケア産業創出関連の採択事業から見る民間・地方主導のソーシャル・イノベーションの重要性~
2015年12月24日
-
長寿社会と健康増進 第3回
高齢期に増加する生活習慣病の医療費
2016年01月25日
-
長寿社会と健康増進 第7回
日本は超長寿社会へ加速化
2016年08月24日
-
ソーシャル・インパクト・ボンドの国際的な潮流
民間資金によって財政負担の重い社会的課題を解決する新たな仕組みは社会に浸透するか。英国の取組みが世界を主導。
2016年10月20日
-
日本でのソーシャル・インパクト・ボンド事業の展望と課題
2016年11月15日
-
休眠預金活用法が成立
2019年秋頃から福祉・健康増進・地方活性化事業へ助成・貸付が開始
2016年12月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
米国の資産運用会社に対する反トラスト法訴訟の行方
争点となるパッシブ運用を通じた水平的株式保有の影響
2025年10月31日
-
生成AI時代の人的資本経営と働き方の未来
『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載
2025年10月24日

