2014年07月11日
サマリー
政府は2013年から、7月を「熱中症予防強化月間」と設定して、熱中症対策の周知に努めている(※1)。熱中症の正しい知識と予防・対処法や、暑さ指数(WBGT:湿球黒球温度)(※2)に関する情報提供などを行っている。一方、今夏は原発が1基も稼働しないと予想されていることや、原発の代わりとなる古い火力発電所などをフル稼働させざるを得ないギリギリの状況であることなどから、政府は引き続き節電するよう求めている(※3)(図表1)。熱中症予防と節電の推進を両立させなければならないのである。

こうした中、効率的なエネルギー利用による安全・快適な社会の構築を目指す、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のスマートコミュニティ実証実験の成果発表会があった(※4)。この実験には、横浜市(広域大都市型)、豊田市(戸別住宅型)、けいはんな(住宅団地型)、北九州市(特定供給エリア型・地方中核都市型)という、さまざまな特性を持つ4地域が選ばれている。それぞれ、夏季と冬季のデマンドレスポンスを行って、ある程度の節電効果が見られたものが多い(図表2)。

これを見ると、2年目の効果が低下している実験が複数ある。豊田市では、天候条件、飽き、リテラシー向上など複数の要因で猛暑を我慢しなくなったこと(EMSの誘導効果が低下)などが原因ではないかと分析している。また、こまめな電源オフの習慣付けや省エネ製品への買い替えなどが一巡してしまえば、さらなる省エネ効果の積み上げは期待しにくいということも考えられる。ただし、ここで注意したいのは、本実験に参加した住民や企業は、省エネ意識の高い層と思われるものの省エネのプロではないということと、参加者は地域の中のほんの一部にすぎないという点である。この実験の中には、省エネのヒントや機器の買い替え提案などコンシェルジュによるコンサルティングサービスを提供して、省エネの積み上げを図ったものもあった。今後は、省エネ意識の高い層に対する一段上の省エネ支援と、実験参加に関心のないような層に対する省エネ意識の浸透対策の両方を考えていくことで、社会全体の省エネ効果を上げることを目指していくことになろう。
(※1)環境省 「熱中症予防強化月間」
(※2)Wet Bulb Globe Temperature/「人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい①湿度、②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指標」(環境省熱中症予防情報サイトより)
(※3)電力需給に関する検討会合「2014 年度夏季の電力需給対策について」(2014年5月16日)
(※4)NEDO 平成26年7月1日 「『スマートコミュニティサミット2014/スマートコミュニティJapan2014』開催報告」
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