いろいろな分野で活用できる「緩和と適応」の考え方

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2014年04月09日

サマリー

先月(2014年3月25日~29日)、横浜市で開催されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第38回総会と同時期に開催された第5次評価報告書第2作業部会では、「第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)」が公開された(※1)。気候変動による影響と脆弱性について地域・分野別に、より具体的に評価すると共に、適応策についても整理している。温室効果ガス削減のような、危険発生の原因を減少させる(ことでリスクを減少させる)方法を「緩和」といい、気候変動によって発生する被害を少なくするような方法を「適応」という。従来、地球温暖化対策のために、CO2などの温室効果ガスの削減を進めるという「緩和」策をメインに議論が進んできた。しかし、気候変動を原因とした我々の生活への影響が顕著になりつつあるとして、その影響に対する「適応」策も考える必要があるとされている。3月27日には環境省が、我が国の「適応計画」策定に向け、影響やリスクについて評価した中間的なとりまとめを「日本における気候変動による将来影響の報告と今後の課題について(中間報告)」として公表した。


「緩和と適応」の考え方は、4月9日にサポートが終了したWindows XPの利用についても当て嵌めることができる。マイクロソフトだけでなくセキュリティ企業などからも、Windows XP使用継続の危険は周知(※2)されている。対応策としては、Windows XP以外のOSに乗り換えるか、そもそもPCの使用を中止することが望ましい。ただし、OSの乗り換えや、PC使用を中止してタブレットやスマートフォン使用に限定といった「緩和」だけでは、情報セキュリティ対策として十分ではないのは従来と同様である。ウイルス対策ソフトの導入や最新版への更新、データの重要性に応じた管理(アクセス権限付与、分離、暗号化、バックアップなど)といった「適応」をすることも求められる。


また、自然災害などへの対応としても、「緩和と適応」の考え方は有用であろう。河川氾濫を抑える下水設備の整備や老朽化が進む道路などの改善は緩和策として重要である。しかし、万が一、これらの設備で対応できない状況になった場合、どう対応するのか、それにかかるコストはいくらか、対策によってどの程度の被害にとどめるのかを総合的に判断する必要がある。より強固な設備を作る緩和策よりも、自然災害の早期警戒・避難システムという適応策にコストをかけた方が、効率的な災害対策になる場合もあるかもしれない。


さらに、「緩和と適応」の考え方は、少子高齢化などの社会問題にも適用できるだろう。疲弊する地域の活性化のため、さまざまな特区などが設定されている。これらの目的の一つは、地域に人を呼び込むことである。しかし、日本全体の人口が増える可能性は高くない。人口減少という環境を前提に考えると、今後はコンパクトシティも現実味を帯びてくるだろう。多数を占めることになるであろう高齢者にとって、徒歩圏内の病院やスーパーの存在は必須となる。一方、徒歩で暮らしが成り立つ街は、高齢者ばかりでなく、子育て世代にとっても暮らしやすいはずである。


意味のある「緩和と適応」策をたてるには、現実(のリスク)から目を逸らしてはならない。


(※1)第2作業部会報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認・公表され、第2作業部会報告書の本体が受諾された。
環境省 平成26年3月31日 「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書 第2作業部会報告書(影響・適応・脆弱性)の公表について(お知らせ)
(※2)IPA(独立行政法人情報処理推進機構) 掲載日:2014年 4月 1日 「2014年4月の呼びかけ 『あなたのパソコンは4月9日以降、大丈夫?』~使用中パソコンの判別方法、乗り換えプランを紹介~

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