2013年08月07日
サマリー
2013年8月5日、資源エネルギー庁は、地熱資源開発に対する地域住民の理解を促進することを目的とした事業への支援として25事業を採択した(※1)。
内訳は、講習会、勉強会、地熱発電所の見学などを実施することにより地域住民などに対して理解を促進するための「ソフト支援事業」が21件、地熱発電におけるメリットを活かした熱水活用事業を対象とした「ハード支援事業」が4件である(図表1)。

ソフト支援事業は、自治体が事業主体になって、協議会や検討委員会を開催するとしているものも少なくない。理解促進を図る対象は、温泉事業者や地域住民となっているが、単なる聴衆としてではなく、共に地域活性化を目指す仲間として、マルチステークホルダー・プロセス(※2)をとることが望まれる。
ハード支援事業では、発電後の熱水をビニールハウス、足湯、食品加工場などに利用するとしている。このように、温度の下がった熱を多段階で利用することを「熱のカスケード利用」といい、効率の良いエネルギー利用となる。実際に、八丈島では、既存の地熱発電所から出た温水を温室の加温に利用している。熱エネルギーを運ぶにはパイプラインの敷設などが必要になるため、遠隔地への供給はコスト的に成り立たない場合があるが、地域で利用できる産業があれば、省エネとなる。
この発表の同日、第2回の募集も発表された(※3)。ソフト支援事業、ハード支援事業と、条件は第1回と同じである。エネルギーというと電力を思い浮かべることが多いが、こうした支援事業によって熱の有効利用について理解が進むことを期待したい。
(※1)経済産業省 資源エネルギー庁 ニュースリリース 平成25年8月5日 「平成25年度地熱開発理解促進関連事業支援補助金の採択をします」
(※2)「多種多様なステークホルダーが対等な立場で参加し、協働して課題解決にあたる合意形成の枠組み」 内閣府「持続可能な未来のためのマルチステークホルダー・サイト」より。
経済産業省 資源エネルギー庁 調達情報 平成25年8月5日 「平成25年度第2回地熱開発理解促進関連事業支援補助金に係る補助事業者の公募について」
(※3)経済産業省 資源エネルギー庁 調達情報 平成25年8月5日 「平成25年度第2回地熱開発理解促進関連事業支援補助金に係る補助事業者の公募について」
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
優先度が低い技術でも人材育成には配慮を
「再生可能エネルギー技術白書2013」から
2013年12月17日
-
合意を得やすい地域でバイナリー発電導入を
2013年05月09日
-
八丈島の地熱発電拡大に向け東京都が検討開始、観光振興も
2013年01月11日
-
再生可能エネルギーの地産他消に求められる合意形成 最終回
地域貢献という合意形成に向けて
2013年06月03日
-
再生可能エネルギーの地産他消に求められる合意形成 第3回
考え方の相違点と背景
2013年05月07日
-
再生可能エネルギーの地産他消に求められる合意形成 第2回
NIMBY問題の整理
2013年03月22日
-
再生可能エネルギーの地産他消に求められる合意形成 第1回
再生可能エネルギー普及の課題
2013年02月28日
同じカテゴリの最新レポート
-
機械学習による有価証券報告書(2025年3月期)の人的資本開示の可視化
経営戦略と人事戦略の連動や、指標及び目標の設定に課題
2025年08月01日
-
サステナビリティWGの中間論点整理の公表
2027年3月期から順に有価証券報告書でのサステナビリティ開示拡充
2025年07月28日
-
カーボンクレジット市場の新たな規律と不確実性
VCMI登場後の市場と、企業に求められる戦略の頑健性
2025年07月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日