従来海外生産拠点として位置づけられてきたフィリピンが、近年は消費市場としても注目を集めつつある。背景には、ASEAN第2位の人口規模(1億人に迫る)、若い人口構成(中央値年齢23歳)、持続的な経済成長で向上する所得水準など、がある。フィリピンの中でも特にポテンシャルが高いのが、マニラ首都圏(以下、マニラ)で、同地域は東京23区ほどの面積で、全人口の1割強が集中している。一人当たり平均所得(2009年)は全国平均の約2倍であり、消費総額は全国の2割強を占める一大消費エリアだ。
フィリピンの消費スタイルには、次のような特徴がある。(1)フィリピン人は総じて消費家で、貯蓄意識は低い。他人に対する見栄もあって、欲しいものがあれば必要性が低くても、多少無理をしてでも購入に走る傾向があるようだ。貯蓄にこだわらないのは、ラテン気質で楽観的な国民性のためかもしれない。また、(2)特に人気が高い消費財に、タブレット型端末のような最新ガジェットやデジカメのようなコンパクトな電子・機械製品がある。最新技術に対する一種の憧憬が、購入の原動力ともなっている。彼らは、発売前のモデルでもいち早く知っているが、これは、英語が堪能でITにもなじんでいるため、英語サイトを通じてグローバルに情報を入手する人が多いという理由による。さらに、(3)フィリピンは東南アジア最大のキリスト教国であり、クリスマス関連の消費も大きく盛り上がる。9月になると早くも街はクリスマスムードとなり、クリスマス商戦は翌2月頃まで続く。他に誕生日も重要なイベントで、誕生日パーティーに頻繁に参加しては、プレゼントをする習慣があるようだ。これらはほんの一例だが、このような現地の消費スタイルや慣習についての理解は、消費者ニーズをつかみ戦略を練る上でのヒントとなろう。
現状では、国内市場をターゲットとした日系企業の進出は限定的だが、進出意欲は徐々に高まっているようだ。今年10月には、ファーストリテイリング社が2012年にマニラでユニクロの事業展開をすることを正式に決定、またライオンが歯ブラシなど日用品の国内市場への参入を表明している。フィリピンでは2000年の小売自由化法により外資の小売業への参入が条件付で認められたが(※1)、今のところ進出形態は、現地企業との合弁設立やフランチャイズ契約のみとなっている。例えばユニクロは、地場のシー財閥系企業と合弁会社を設立し、同財閥の運営する巨大ショッピングモール内の店舗を通じて商品の販売を計画している。フィリピンの小売業界では、シーやゴコンウェイといった華僑系財閥が強い影響力やネットワークを持っており、進出に際しては、まずはこれらの企業グループとの提携により進めるのが現実的な選択肢といえよう。
フィリピンの市場は、外資にとって開拓の余地が残されており、所得水準の高まりに伴って今後一層魅力が増すと考えられる。外資規制が緩和されるのをじっと待つよりは、提携等によりスピーディーに進出しニーズ調査やブランドイメージの構築を図っておくことが、今後の本格的な市場拡大の際の鍵になろう。今こそ、真剣な進出検討をする絶好のタイミングと言えるのではないだろうか。
(※1)フィリピンでは、払込資本金が250万ドル未満の小売業の外資参入が禁止されている。これは、地場の零細小売店を保護するためといわれている。
図表 地域別の人口と消費(2009年)

注:青はルソン地方(北部)、黄色はビサヤ地方(中部)、赤はミンダナオ地方(南部)。赤い点線は全国平均
出所:“2009 Family Income and Expenditure Survey”(フィリピン国家統計局)より大和総研作成
出所:“2009 Family Income and Expenditure Survey”(フィリピン国家統計局)より大和総研作成
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