かつて他のアジア諸国が目覚しい発展を遂げる中、フィリピンの経済成長は長期に亘って停滞気味を余儀なくされていた。ところが2000年以降、オフショアBPO拠点としてのフィリピンが、一躍注目を集めるようになった。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)とは、自社業務の一部を外部企業に切り出して委託することであり、顧客に対応するコールセンターや財務・人事等のバックオフィスなどを外部委託するのが代表例である。すでに、デル(米国)やIBM(米国)、シティバンク(米国)といった大手グローバル企業が、フィリピンにコールセンター拠点を構えている。
フィリピンのBPO関連の市場規模は、2001年時点では1億米ドルにも満たなかったが、2010年には約90億米ドルまでに拡大、従業者数も約50万人にまで増加している。コールセンター業務に限れば、インドを抜いて世界首位に躍り出ており、拠点をインドからフィリピンに移す企業も少なくないようだ。2010年のフィリピンの経済成長率は、こうしたBPO産業にも牽引され、1976年以降で最高となる7.3%を記録している。
フィリピンがBPOの海外拠点として注目される理由としては、(1)米国の植民地であったため英語に堪能な人材が豊富であること(2007年大卒者:約44万人)、(2)国民の人柄が明るく陽気なため顧客サービスに適していること、(3)一定のコスト競争力があるなどが挙げられている。インドとの比較で言えば、米国文化への理解と親和性がより高いこと、米国アクセントに近い英語を話すため理解しやすいことなどから、特に米国企業から高く評価されているようだ。
こうした強みに加えて、政府の積極的な外国資本導入策の果たす役割も大きい。政府は、現行の投資優先計画(2010年)でBPO産業をインフラなどと並ぶ奨励事業分野の一つに指定、進出企業には最大8年間に亘って法人所得税の免税などの優遇措置を提供している。
また最近フィリピンのBPOは、業務範囲やアウトソーシング国などの面で多様化が進みつつある。業務範囲については、データトランスクリプション (医療、法務) (※1) 、市場調査、知財管理、財務管理といった、今までよりも高付加価値な業務への拡大が見られる。アウトソーシング国についても、これまでは米国一辺倒であったのが、日本や欧州などへ広がりが見られるようになった。日系企業では、コールセンターよりはむしろ、ソフトウェア開発などIT関連のアウトソーシングが多いようである。また、コールセンター業務を応用し、フィリピン人講師による英会話サービスを無料インターネット電話にて日本人顧客に格安で提供するビジネスなども広がっている。
(※1)音声記録を基にした文書作成業務(テープ起こし)。作成される文書には、例えば医療分野での診療記録や法務分野での裁判記録などがある。
今後、必要となる人材が安定に確保され、財務や法務といった分野での専門的な知識に対応できる人材の育成が進めば、BPO産業のさらなる成長が続いていこう。海外のアウトソーシング先を検討している日系企業などは、一度フィリピンに目を向けては如何だろうか。
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