ESGニュース
ジョブ型職業を意識した進路選択の兆し

平成25年度学校基本調査から

2013年8月15日

文部科学省が毎年実施している「学校基本調査」の平成25年度(速報)結果が公表された(※1)。学校基本調査では、学校教育行政に必要な学校に関する基本的事項を明らかにすることを目的として、全国の学校等について、学校数、在学者数、卒業者数、就職者数、進学者数等を調べている。今回の公表によれば、大学(学部)卒業者の就職率は3年連続で上昇しており、平成25年は前年比3.4ポイント上昇して67.3%になったという。この就職率には、正規の職員等でない者(※2)も約2万3千人含まれているが、非正規分を除いた就職率も上昇しており、前年比3.2ポイント高い63.2%になっている。大学院(修士課程)修了者の就職率も3年連続で上昇しており、平成25年は73.7%となっている。しかし、大学や大学院の卒業・修了者の就職率が回復に向かう傍ら、高等学校卒業者(※3)(現役)の大学・短大への進学率は低下が続いており、平成25年はピーク時(平成22年)より1.1ポイント低い53.2%にとどまっている(図表1)。

平成25年の大学(学部)卒業者の就職状況(非正規含む)を、学問分野別にもう少し詳しくみてみると、家政(80.7%)、教育(74.9%)、社会科学(74.4%)などの分野で就職率が高い一方、理学(43.2%)、芸術(48.2%)、工学(53.0%)などでは平均を下回っていることがわかる。理学・工学・農学では、大学院への進学率が高いため、学部卒業時点の就職率が低くなっており、芸術では就職や進学以外の形で活動する者の比率も高いものとみられる。また、就職状況を職業の内容別にみると、保健(91.3%)、工学(74.0%)、教育(64.2%)などの分野では、専門的・技術的職業に就く比率が高いのに対し、社会科学や人文科学では、事務や販売などの職業に就く比率が高くなっている点に特徴がみられる(図表2)。もっとも、大学には多様な名称の学部が多数あるため(※4)、これらを単純に分類・比較することは難しいが、人文・社会科学系の分野では、企業の一員として就職するいわゆるメンバーシップ型(就社型)が多いのに対し、保健や教育などの分野では、職種を限定したいわゆるジョブ型の就職も増えているものと考えられる。

図表2:職業別就職状況と就職率(平成25年)

平成25年の大学(学部)の入学者数をみると、保健(5.0%)、家政(4.9%)、教育(3.4%)の増加率が高くなっているのに対し、人文・社会科学の増加率は1%以下の水準にとどまっている(※5)。直近5年間の大学(学部)学生数の構成比をみても、人文・社会科学の分野で低下が続く一方で、保健・家政・教育の分野が上昇していることがわかる(図表3)。教育機関による選抜が行われることが多い日本の教育の仕組みでは、必ずしも希望する進路に進めているとは限らないが、若者の進路選択において、従来のメンバーシップ型だけでなくジョブ型の職業が意識されている可能性が示唆されよう。大学進学率が低下する一方で、専門学校(専修学校専門課程)への進学率は4年連続で上昇しており、平成21年の14.7%から平成25年には17.0%に達している。経済規模が拡大を続ける社会では、競争に勝つことが社会から評価を得る近道ともみられてきたが、成熟型社会では専門性や力量が問われるジョブ型が強みを増す可能性があることを、若者は敏感に察知しているのかもしれない。

組織を取り巻く環境の複雑化やIT機能の高度化、アウトソーシングの拡大等に伴って、従来のメンバーシップ型正社員への需要が縮小し、ジョブ型人材を求める動きが広がることは十分に考えられる。しかし、メンバーシップ型雇用を長く続けてきた日本では、企業や社会の仕組みがこのような動きに的確に対応できていない面もあり、労働市場や労使関係にも改善すべき点は多いであろう。内閣総理大臣の諮問機関として平成25 年1月に設置された「規制改革会議」は、6月5日に「規制改革に関する答申(※6)」を提出している。その答申では、「雇用改革を貫く横断的な理念・原則」として、「第一に、労使双方の納得感とメリットを生む改革、第二に、国際比較からみて合理的な改革、第三に、働き手が多様な雇用形態を選択でき、個人の能力・資質を高める機会が与えられるとともに、雇用形態による不合理な取り扱いを受けない均衡処遇を推進する改革」の視点が重要とされている。将来に期待と希望を持つことができ、自らを高める努力が報われる社会が形成されるよう、適切な改革が進められることを期待したい。


(※1)「学校基本調査-平成25年度(速報)結果の概要-」文部科学省
(※2)雇用の期間が1年以上で期間の定めのある者で、かつ1週間の所定労働時間が30~40時間の者
(※3)高等学校卒業者:高等学校(全日制・定時制)及び中等教育学校後期課程卒業者
(※4)平成24年度の学部数は2,456とされており、学際的な教育を行っているとみられる名称を持つ学部も多数ある。
(※5)大学進学率は低下しているが、高等学校卒業者数は前年比約3万5千人増加しているため、大学進学者数は全体では前年比1.5%増加している。
(※6)「公表資料(平成25年~)『規制改革に関する答申~経済再生への突破口~(平成25年6月5日)』」内閣府

お気に入りへ登録

この記事を「お気に入りレポート」に登録しておくことができます。

このレポートのURLを転送する

  • @

おすすめ関連レポート

お問い合わせ

PDFファイルの閲覧にはAdobe® Reader®新しいウィンドウで開きますが必要となります。お持ちでない方は、アドビ システムズのウェブサイトから無償ダウンロードができます。
なお、Adobe® Reader®のインストール方法は、アドビ システムズ ウェブサイト新しいウィンドウで開きますをご覧ください。

Get Adobe® Reader®

リサーチ

リサーチメールマガジン

大和総研研究員によるレポートやコラム、書籍・刊行物などの最新情報を適宜お届けします。

ダイワインターネットTV

2016年8月15日
“女性の活躍”に関する情報開示と投資家動向

書籍

ソーシャルファイナンスの教科書―「社会」のために「あなたのお金」が働くということ

金融は本来自分のためと社会のために自分のお金に働いてもらうこと、という考え方を出発点として、地球環境問題や、所得格差などの社会課題解決のために、個人としてできることから、世界の運用業界で注目されているサステナブル投資の潮流などを含め、新たな金融―ソーシャルファイナンス―の在り方について考察していきます。