サマリー
平成の30 年間を振り返ると、生産性や所得水準は着実に向上した半面、所得格差の拡大は以前にも増して重要課題となった。「日本型平等社会」にほころびが生じたことで、セーフティネットの網の目から漏れ落ちる人が増加し、相対的にも絶対的にも貧困率が上昇するなど、他の先進国では見られない形で所得格差が拡大している。
こうした中、ベーシック・インカム(BI)への関心が国内外で高まっている。これは全国民に定期的かつ一律に現金給付する仕組みだ。BIには、①救済すべき人の取りこぼしがない、②働き方の多様化や急な収入減・失業にも対応できる、③各人が申請しなくとも給付を受けられる—といった利点がある。だが巨額の財源確保が必要で、貧困対策としては費用対効果が悪い。
人口減少と超高齢化が進む日本では、社会的弱者に重点的に給付する視点が一層求められている。BIを導入するのではなく、既存の制度をベースにBIの利点をうまく取り込むことで、悉皆性の高いセーフティネット機能を備えた税・社会保障制度を目指すべきだ。そのためには、金融口座とマイナンバーの紐づけや、多数の制度の情報連携などが課題となろう。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
医療等情報の二次利用に向けた環境整備
医療DXの効果を可視化し、一次利用を広げることがカギ
2025年06月12日
-
対象者拡大から8年、今後のiDeCoの可能性
iDeCo加入者数363万人(2025年3月末)、対象者拡大前の12倍に
2025年05月27日
-
DC自動移換者問題の解決に向けて
自動移換者を「発生させない」「増やさない」対策が求められる
2025年03月03日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日