サマリー
平成の30 年間を振り返ると、生産性や所得水準は着実に向上した半面、所得格差の拡大は以前にも増して重要課題となった。「日本型平等社会」にほころびが生じたことで、セーフティネットの網の目から漏れ落ちる人が増加し、相対的にも絶対的にも貧困率が上昇するなど、他の先進国では見られない形で所得格差が拡大している。
こうした中、ベーシック・インカム(BI)への関心が国内外で高まっている。これは全国民に定期的かつ一律に現金給付する仕組みだ。BIには、①救済すべき人の取りこぼしがない、②働き方の多様化や急な収入減・失業にも対応できる、③各人が申請しなくとも給付を受けられる—といった利点がある。だが巨額の財源確保が必要で、貧困対策としては費用対効果が悪い。
人口減少と超高齢化が進む日本では、社会的弱者に重点的に給付する視点が一層求められている。BIを導入するのではなく、既存の制度をベースにBIの利点をうまく取り込むことで、悉皆性の高いセーフティネット機能を備えた税・社会保障制度を目指すべきだ。そのためには、金融口座とマイナンバーの紐づけや、多数の制度の情報連携などが課題となろう。

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